恋愛小説を書かせたら日本一!村山由佳のおすすめ小説をまとめて紹介する!

村山由佳と言えば、甘く切ない恋愛小説を書く人気作家。というのは半分正解で半分不正解でしょう。

「おいしいコーヒーのいれ方」や「天使の卵」など、初期〜中期の作品にはいわゆるベタベタな恋愛小説が多いです。

(ベタベタと言っても、子供から大人まで楽しめる高品質な恋愛小説である、と補足しておきます)

しかしここ10年ほどの作品では、恋愛をベースとしつつ他ジャンルの要素を取り入れた小説を多く執筆されています。

この記事では、作品の幅を広げつつ、進化し続ける恋愛小説家「村山由佳」のおすすめ作品を厳選紹介していきます。

ここに紹介する作品の大部分が電子書籍で読むことが可能です。もちろん紙には紙の良さがありますが、安く買えたり場所を取らなかったりと電子書籍のメリットもあります。是非平行してご利用ください。

 

村山由佳のおすすめ小説10作品を厳選紹介!!

紹介する順番についてはあくまでも個人の所感となっておりますので、予めご了承ください。

 

1.『天使の卵 エンジェルス・エッグ』(1993)

そのひとの横顔はあまりにも清洌で、凛としたたたずまいに満ちていた。19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない―。
「BOOK」データベースより引用

1994年刊行の著者デビュー作。第6回「小説すばる」新人賞受賞作品であり、ミリオンセラーも達成した人気作品。
美大志望の浪人生歩太と、精神科医である年上の女性春妃との恋愛を描いた小説。
優しく清らかな文体で描かれた二人の恋はまさしく純愛。短いながらもしっかりと起承転結が意識されており、強烈なラストは切なく悲しい。
また刊行十年後から、歩太の周辺人物の視点から描かれた続編が発表されており、『天使の卵』シリーズとして彼らのその後が語られている。

『天使の卵』シリーズの順番(刊行順)

1.天使の卵(1994)
2.天使の梯子(2004)
3.ヘヴンリー・ブルー(2006)※スピンオフ
4.天使の柩(2013)


 

2.『キスまでの距離』(1994)

高校3年生になる春、父の転勤のため、いとこ姉弟と同居するはめになった勝利。そんな彼を驚かせたのは、久しぶりに会う5歳年上のかれんの美しい変貌ぶりだった。しかも彼女は、彼の高校の新任美術教師。同じ屋根の下で暮らすうち、勝利はかれんの秘密を知り、その哀しい想いに気づいてしまう。守ってあげたい!いつしかひとりの女性としてかれんを意識しはじめる勝利。ピュアで真摯な恋の行方は。
「BOOK」データベースより引用

勝利とかれん、2人の純愛を描いた恋愛小説シリーズ「おいしいコーヒーのいれ方」のシリーズ1作目。
高校生になった勝利が従兄弟であるかれんたち花村家と突然同居することになるところから物語は始まり、お互いを意識するようになる過程はここから始まる長い旅路の序章である。
優しい休日の午後を思わせる、彩りを感じられるような優しい情景描写や、ストレートに感情を揺さぶってくるような登場人物の心理描写、このシリーズには村山作品の全てが詰まっていると言っても過言ではない。
30年近くの時を経てシリーズは完結。勝利とかれんは勿論、彼らを支える家族や友人の成長を実感出来る絆の物語。


 

3.『風よ、あらしよ』(2020)

明治・大正を駆け抜けた、アナキストで婦人解放運動家の伊藤野枝。生涯で三人の男と〈結婚〉、七人の子を産み、関東大震災後に憲兵隊の甘粕正彦らの手により虐殺される――。その短くも熱情にあふれた人生が、野枝自身、そして二番目の夫でダダイストの辻潤、三番目の夫でかけがえのない同志・大杉栄、野枝を『青鞜』に招き入れた平塚らいてう、四角関係の果てに大杉を刺した神近市子らの眼差しを通して、鮮やかによみがえる。著者渾身の大作。
「BOOK」データベースより引用

婦人解放運動や、パートナーの大杉栄と共に無政府主義に傾倒した大正時代の活動家、伊藤野枝の生涯を描いた大長編。
幼少期から女学校時代を経て三人の男性との結婚に至るまで、自由と女性の権利を自らの生き様と共に主張する激動の人生を書き綴っている。
当時の時代背景や多面的な視点から描かれたストーリー構成には綿密な取材の跡が伺える。
一方あくまでも純粋な伝記小説ではなく、恋愛小説を得意とする著者ならではの心理描写、特に野枝の内側から迸る感情を力強く表現することで、物語としてとても厚みが出ている印象を受ける。
吉川英治文学賞受賞も納得の、著者渾身のチャレンジ作である。


 

4.『翼 cry for the moon』(1997)

父の自殺、学校での苛め、母には徹底的に拒まれて…。N.Y.大学の学生、篠崎真冬は心に深い傷を抱えて生きてきた。恋人、ラリーの幼い息子ティムも、実の母親から虐待を受けて育った子供だった。自分の居場所を求めて模索し幸せを掴みかけたその時、真冬にさらなる過酷な運命が襲いかかる。舞台は広大なアリゾナの地へ。傷ついた魂は再び羽ばたくことができるのか。自由と再生を求める感動長編。
「BOOK」データベースより引用

ニューヨークの大学院に通う大学院生篠崎真冬が、これまで経験してきたいじめや虐待、そして親しい者との別れなどを乗り越えていく再生の物語。
魂の破壊と再生を繰り返し、過酷な運命を乗り越えた先にあるものは何なのか。無機質なニューヨークの街並みと、大自然のアリゾナを対比的に描いた情景描写は素晴らしく、更には人種の問題や原住民を取り上げた民族・宗教にまで羽を広げた長編作品。
前期村山作品を総括するような傑作である。


 

5.『星々の舟』(2003)

禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末娘、居場所を探す団塊の兄、そして父は戦争の傷を抱いて……心震える家族の物語
「BOOK」データベースより引用

道ならぬ恋に苦しむ兄妹と、家族の物語。第129回直木賞受賞作品。
近親相姦や不倫、さらには戦時中の慰安婦と、性にまつわる多くの問題が含まれており、非常に重たい作品である。
作品全体に漂う暗い雰囲気の中にも、何気ない細やかな描写が点在する。ラストに効いてくる「紫の小菊」をはじめ、歳を重ねるほどに味わい深さを感じられる。
本作品より後、『ダブル・ファンタジー』で決定的となるが、作品の幅が大きく広がっていく。ここが村山由佳の変化点と言えるだろう。


 

6.『風は西から』(2018)

大手居酒屋チェーン「山背」に就職し、張り切っていたはずの健介が、命を絶った。異変に気づけなかった恋人の千秋は自分を責め、悲しみにくれながらも、彼の両親と協力し、健介の名誉を取り戻すべく大企業を相手に闘いを挑む。しかし「山背」側は、証拠隠滅を図ろうとするなど、卑劣極まりない――。小さな人間が闘う姿に胸が熱くなる感動長篇。
「BOOK」データベースより引用

飲食業界での過酷な労働環境により過労死してしまった青年の無念を晴らすべく、恋人が彼の両親と共に大企業に挑む物語。
世間を賑わせた某大手居酒屋チェーンの事件をモデルにしていることは言うまでもないが、恋人たちの幸せな日常に次第に影が差していく前半部分から、一転社会派小説となる後半部分への転換が見事。
頑張りすぎるあまり次第に追い込まれていく青年の描写には迫力があり、それが遺族の無念と人の温かさに触れるラストへの布石になっている。
小説内でも唄われている、奥田民生の同名楽曲を聞いた上で読むと尚良いだろう。


 

7.『すべての雲は銀の…』(2001)

恋人由美子の心変わりの相手が兄貴でさえなかったら、ここまで苦しくはなかったのかもしれない。傷心の祐介は、大学生活から逃れるように、信州菅平の宿「かむなび」で働き始める。頑固だが一本筋の通った園主、子連れでワケありの瞳子…。たくましく働く明るさの奥に、誰もが言い知れぬ傷みを抱えていた。
「BOOK」データベースより引用

実の兄に恋人を取られた大学生の主人公が、長野は菅平の宿で働き、そこでの出会いを通して自らを取り戻していく。
とにかく登場人物のキャラが濃くてユニーク。そして主人公だけでなくそんなユニークな登場人物たちも人知れず痛みを抱えている。
長野の自然豊かな環境の中で、人の痛みに寄り添いながら再生していく主人公の成長が優しく、そして眩しく映る。
北上二郎氏の解説も素晴らしく、人物造形の巧さと終盤の情事を絶賛しているので、是非解説まで合わせて読んでほしい。


 

8.『海を抱く BAD KIDS』(1999)

超高校級サーファーであり誰とでも寝る軽いやつと風評のある光秀。一方、まじめで成績優秀、校内随一の優等生の恵理。接点のほとんどない二人がある出来事をきっかけに性的な関係をもつようになる。それは互いの欲望を満たすだけの関わり、のはずだった。それぞれが内に抱える厳しい現実と悩み、それは体を重ねることで癒されていくのか。真摯に生きようとする18歳の心と体を描く青春長編小説。
「BOOK」データベースより引用

人に言えぬ悩みを抱える高校三年生の男女を描いた青春小説。『BAD KIDS』と裏表の関係にある作品であり、どちらから読んでも楽しめる。
房総の海に暮らす高校生サーファーと優等生の女子生徒、彼らの外見からは感じ取れないであろう”“を描き出す表現の巧さが光る。
青春小説とジャンル分けが出来るとは思うが、ダイレクトな性的描写が散見される。またそれだけでなく、ジェンダー問題も扱っており、改めて読み返すと多様性に触れた作品であると感じる。


 

9.『雪のなまえ』(2020)

「夢の田舎暮らし」を求めて父が突然会社を辞めた。いじめにあい登校できなくなった小学五年生の雪乃は、父とともに曾祖父母が住む長野で暮らし始める。仕事を諦めたくない母は東京に残ることになった。胸いっぱいに苦しさを抱えていても、雪乃は思いを吐き出すことができない。そんな雪乃の凍った心を溶かしてくれたのは、長野の大自然、地元の人々、同級生大輝との出会いだった―。ほんとうの自分を受け容れてくれる場所。そこを見つけるため、今いる場所に別れを告げるのは、決して逃げではない。居場所探しの物語。
「BOOK」データベースより引用

いじめにより不登校となった小学生の娘と田舎暮らしに憧れる父親が、東京を離れて長野での再出発を試みる、家族の物語。
設定から重く暗い物語を想像してしまうが、田舎の風景が優しい日本語で語られるためか、人との繋がりを感じられる温かみのある作品である。
上述した『天翔る』でもそうだが、子供の心理描写が抜群に上手い。恋愛小説とは異なり、幼さの残る感情表現の在り方を知り尽くしているようで、著者の人物形成の幅の広さに驚かされる。


 

10.『嘘 Love Lies』(2017)

刀根秀俊、美月、亮介、陽菜乃は仲のいい友達グループだった。あの事件が起こるまでは―。恐怖、怒り、後悔、そして絶望。生涯拭えぬ過ちと心の傷を負ったまま、各々の人生を歩んでいた4人。純粋な想いと暴力の行き着く果てに迎えた結末とは?純愛と狂気。聖と贖い。読む者すべての感情を揺さぶる究極の愛!
「BOOK」データベースより引用

恋愛×ノワール」という帯文の宣伝文句の通り、裏社会や犯罪といった要素を取り入れた、著者の新境地とも言える作品。
作中で語られているのは友情と淡い恋心、そして切なさを伴った愛情。一つの事件をきっかけに中学生男女4人の、それぞれの心情が大きく変わっていく様を20年間に渡って描いた長編小説。
主人公秀俊だけでなく、他の3人の視点からも事件やその後の様子が語られていて、誰も置いていかない優しさを感じる。多くのテーマを持った作品だが、長編に相応しい圧倒的な読み応えを誇る。


 

11.『天翔る』(2013)

不登校になったまりもは、看護師の貴子から誘われた石狩湾の志渡銀二郎の牧場で、乗馬の楽しさを知った。そして人と馬が一体となりゴールを目指す耐久レース・エンデュランスと出合う。まりもを見守る大人たちも皆、痛みを抱え生きていた。世界最高峰デヴィス・カップ・ライドへのはるかなる道のりを描く。
「BOOK」データベースより引用

父との過酷な別れを経験し不登校となった11歳の少女まりもが、エンデュランスという乗馬耐久競技と出会う。
傷ついた少女が、馬や乗馬に携わる良き大人たちとの出会いをきっかけに再生・成長していく物語。
著者の真骨頂である恋愛要素は皆無と言っていいが、「再生」は実は恋愛に負けず劣らず彼女の多くの作品に出てくるテーマである。人は、人に出会うことで変わることが出来るのだと教えてくれる。
主人公の少女まりもだけでなく男性恐怖症の貴子を始め、何かを喪失した経験を持つからこそ痛みのわかる人間たちが織り成す、他者を思いやることの大切さに触れた感動作品。


 

12.『野生の風 WILD WIND』(1995)

色に魅せられた染織家・多岐川飛鳥、野生動物のいのちを撮るカメラマン・藤代一馬。ふたりが出会ったのは、ベルリンの壁崩壊の夜。運命的な恋の予感はそのまま、アフリカでの再会へと結びつく。サバンナの大地で燃え上がる愛、官能の炎。しかし、思いがけない事実が発覚して―。運命の出会いから慟哭のラストまで胸を揺さぶる恋愛小説。
「BOOK」データベースより引用

初期の恋愛小説を代表する人気作品。センセーショナルな出会い、運命めいた再開と単純なメロドラマを思わせながら、それを打ち崩すのが村山流。
お互いに愛し合いながらも付かず離れずの二人がもどかしく、またラストの迫力ある文章と切なさは群を抜いており心を揺さぶる。
また作品の舞台となるアフリカの大草原を、朝露の湿り気すら感じる程臨場感のある風景描写で描くセンスの高さもこの頃から健在である。
強いて言えばヒロイン飛鳥、内面の弱さを見せないのは美点ではあるが染織家と珍しい職業設定も生かした掘り下げがもう少しあれば更に作品に厚みが出たかもしれない。


 

13.『放蕩記』(2011)

厳しい母親を恐れながらも、幼い頃は誇りに思っていた。いつからだろう、母を愛せなくなってしまったのは―。小説家の夏帆は、母親への畏怖と反発を抱えながら生きてきた。反抗の果ての密かな放蕩、結婚と離婚。38歳になりあらためて母娘関係と向き合う夏帆に訪れた、衝撃の真実とは。愛と憎、最も近い女同士の、逃れられないつながり。母を持つすべての人に贈る、共感と感動の自伝的小説。
「BOOK」データベースより引用

女性小説家を主人公に、母と娘の関係性を掘り下げた作品。著者の自伝的小説である。
いわゆる毒親を題材にして、娘の立場から年とともに変わりゆく親との関わり方や感情を描いているのだが、事実をベースとしている(でろう)分リアルさが伝わり心苦しくさえある。親と子、それぞれの視点で考えさせられる作品。
著者のエッセイと合わせて読むとより理解度が深まるかもしれない。


 

14.『はつ恋』(2018)

南房総の海沿いの町で、古い日本家屋に愛猫と暮らす小説家のハナ。二度の離婚をへて、人生の後半をひとりで生きようとしたときに巡り合ったのは、幼少期を姉弟のように過ごした幼馴染のトキヲだった――。四季のうつくしい巡りのなかで、喪失も挫折も味わったふたりは心も体も寄せ合いながら、かけがえのない時を積み重ねていく。あたたかな祝福に満ちた、大人のための傑作恋愛小説。
「BOOK」データベースより引用

2度の離婚を経験した女流作家を主人公に、40代カップルの落ち着きのある恋愛模様を描いた小説。
再開し結ばれた元幼馴染との穏やかな生活、そして他作品にも共通する南房総での自然豊かな暮らしぶりが、色鮮やかな情景と共に語られている。
家族や仕事など生活面での縛りもありながら他者を気遣い寄り添う大人たちの恋愛は、初期の頃とはまた違った優しさを感じる。キャリアを積み重ねたことで書ける作品ではないだろうか。


 

15.『星屑』(2022)

この子たちを輝くスターにしてみせる――。田舎者のミチルと、サラブレッドの真由。過酷な芸能界で、少女たちをスターダムに押し上げようとする女性マネージャーの前に立ちはだかる壁……。迫真の芸能界小説の誕生!
「BOOK」データベースより引用

大手芸能事務所のマネージャーを主人公とした、2人の少女のサクセスストーリーを描いたエンタメ小説
新聞連載だったこともあるのか、章ごとにテンポ良く進むストーリー展開と起承転結が意識されており、非常に読みやすい。
多少ご都合主義な展開はあれど、芸能界でのし上がっていく2人の少女を対比的に描きながら、彼女たちの成長を女性マネージャーの視点で上手く表現しており、著者の作品の幅広さを感じさせる作品。


 

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