横山秀夫といえば、『半落ち』や『クライマーズ・ハイ』などメディア化もされた長編小説を思い浮かべる人は多いでしょう。
あるいは、刑事小説やミステリなどをよく書いている作家だというイメージを持っている人もいるかもしれません。
この記事では、作家横山秀夫のおすすめ小説を、ジャンル問わず長編も短編もまとめて紹介していきます。
作家横山秀夫のおすすめ小説10選
1.『クライマーズ・ハイ』
1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。
「BOOK」データベースより引用
著者が上毛新聞社で新聞記者として勤務していた頃に遭遇した、日航機墜落事故を題材としている。
登場する新聞社や人物らは架空の設定とはいえ、実際に著者の経験談を基にしているため迫力があるし、ほとんどノンフィクションと言って良いような熱のある小説となっている。
日航機墜落事故は他にも『沈まぬ太陽』など書籍化・メディア化されている作品はあるが、この作品では地方紙の新聞記者という異なった視点から事件を知ることができる。
2.『第三の時効』
殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か!?刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる表題作ほか、全六篇の連作短篇集。本格ミステリにして警察小説の最高峰との呼び声も高い本作を貫くのは、硬質なエレガンス。圧倒的な破壊力で、あぶり出されるのは、男たちの矜持だ―。大人気、F県警強行犯シリーズ第一弾。
「BOOK」データベースより引用
F県警捜査一課の3人の班長を主人公とした短編集。個々の短編で事件が解決されるだけでなく、6つの短編を通して捜査一課の内情や人間模様も描いた作品となっている。
表題作の「第三の時効」はあらすじからして既に面白そうだが、実際読んでみると更に上をいく出来栄え。その他の短編集も総じてハイクオリティ。
本作品はF県警シリーズの第1作と呼ばれているが、未収録の短編こそ存在するものの、その後第2作以降は現在発表されていない。
3.『64(ロクヨン)』
元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと匿名問題で揉める中、“昭和64年”に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。
「BOOK」データベースより引用
上述したD県警シリーズ、4作目にして初の長編小説。また著者にとっては体調不良により、前作から7年ぶりの刊行となった久しぶりの作品でもある。
数ある警察小説の中でもトップクラスに心理描写が多く丁寧。それゆえ徐々に謎に迫る主人公の様子に知らずと引き込まれていく。ラストも驚きの結末が待っている。
本作品はベストセラーとなり、2016年には映画化もされた。映画版はAmazonプライムビデオ対象作品となっている。
\プライムビデオ 初回30日間無料はこちら/
4.『ルパンの消息』
十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人―。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。当時、期末テスト奪取を計画した高校生三人が校舎内に忍び込んでいた。捜査陣が二つの事件の結び付きを辿っていくと、戦後最大の謎である三億円事件までもが絡んでくるのだった。時効まで二十四時間、事件は解明できるのか。
「BOOK」データベースより引用
本作品がサントリーミステリー大賞佳作を受賞したことで、新聞社を退社したというデビューのきっかけとなった処女作(刊行はなぜか10年以上後の2005年)。
過去と現在、2つの異なる時間軸が並行して進む物語に、後半の畳み掛けはものすごい疾走感。これが処女作とは信じられない完成度。
5.『顔(FACE)』
「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。鮮やかなヒロインが活躍する異色のD県警シリーズ。
「BOOK」データベースより引用
「64」へ続くD県警シリーズ3作目となる短編集。1作目『陰の季節』に登場した似顔絵が得意な婦警を主人公としたスピンオフ的な作品。
似顔絵を書く刑事が登場する小説・ドラマはあるが主人公となると話は別。更には婦警ということもあり男社会で生きる葛藤や苦悩も描かれている、新しい警察小説。
6.『臨場』
臨場―警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。捜査一課調査官・倉石義男は死者からのメッセージを的確に掴み取る。誰もが自殺や病死と疑わない案件を殺人と見破り、また、殺人の見立てを「事件性なし」と覆してきた。人呼んで『終身検死官』―。組織に与せず、己の道を貫く男の生き様を、ストイックに描いた傑作警察小説集。
「BOOK」データベースより引用
事件現場に自ら足を運び、事件性の有無などを調査する検死官。「終身検死官」と呼ばれている調査官が主人公の短編集。
ミステリーや警察小説は長編に限るというのが持論だが、横山秀夫作品に於いてはその持論は当てはまらない。
人物描写も過不足無く、普段スポットライトの当たらない検死官という職業をよく描けている。もちろん短編なので気軽に読めるという利点もあり、おすすめの短編集。
7.『出口のない海』
人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは―。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。
「BOOK」データベースより引用
第二次世界大戦、人間魚雷「回天」に搭乗する、元甲子園優勝投手の姿を描いた戦争小説。
『永遠の0』と同じく(こちらは航空隊だが)、終戦間際の特攻部隊を描いており、推理小説,警察小説を主なジャンルと認識している読者には非常に驚かれる作品。
戦時中の人々の思いや、悲しき出来事の数々が丁寧に描かれている。戦争を描いた作品の一つとして、必読に入る一冊。
8.『陰の季節』
警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下り先ポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべもなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた…。「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾。
「BOOK」データベースより引用
D県警シリーズの1作目。警務部警務課調査官というポストの人事担当者が主人公という異色の警察小説。
これまでの事件ありきの同ジャンル小説とは違い、ミステリ,サスペンス要素はそこまで強くない。あえていえば警察を題材にした群像小説と言えるかもしれない。
また、先に紹介した『臨場』等と同様、本作品も短編集としてのクオリティは高い。
9.『半落ち』
「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの二日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは―。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。
「BOOK」データベースより引用
タイトルは言葉の通り”一部自供“を表す警察用語を意味する。なぜ落ちないのか?その理由を巡る物語。
いろんな角度から徐々に真相に迫っていく過程が面白い。だがそれも結末があればこそ。このラストに納得できるかどうかは、、人それぞれ。過程が面白いだけに少々物足りなく感じるかもしれない。
10.『ノースライト』
一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?
「BOOK」データベースより引用
前作『64(ロクヨン)』から6年振りとなる、2019年に刊行された新作。今回はシリーズものではなく、長編ミステリーとなっている。
6年丸々創作に費やしたのかと思うほど作り込みがすごい。ミステリと言われているが、建築士である主人公を中心としたヒューマンドラマと思って読んだ方が良いかもしれない。
終わりに
横山秀夫のおすすめ作品をお届けしました。この記事は本ブログのちょうど100記事目に当たります。
小説というカテゴリで今までいくつも記事を書いていますので、宜しければ他記事もご覧ください。
また、読みたい小説を見つけたら電子書籍サービスを活用してお得に読みましょう!
コメント