宮部みゆきの人気作「杉村三郎シリーズ」全作品と読むべき順番を紹介していく

 

宮部みゆきの『杉村三郎シリーズ』といえば、小泉孝太郎主演でドラマ化もされた人気作です。ミステリやファンタジー、時代ものと幅広い作品を執筆している人気作家ですが、今回はその中でもシリーズ化されている『杉村三郎シリーズ』を紹介していきます。

本作品は1作で完結するシリーズでありながら、読み進めていくうちに、主人公である杉村三郎の置かれている環境が徐々に変化していきます。それが物語のラストに語られることもあり、順番を間違えると過去作品の壮大なネタバレになりかねないので、順番通りに読むことを強くおすすめします

※その他宮部みゆきおすすめ作品は別記事で紹介しております。

 

杉村三郎シリーズとは

『杉村三郎シリーズ』(すぎむらさぶろうシリーズ)は、宮部みゆきの推理小説のシリーズ。
児童書専門の出版社「あおぞら書房」の編集者から一転、日本屈指の大グループ企業・今多コンツェルン会長の娘婿となり、同コンツェルングループ広報室、さらには

 

と引用したところ、しょっぱなの概要で壮絶なネタバレが、、、!ここでやめておきます。

 

一言で言うと平凡なサラリーマンの杉村三郎が、ひょんなことからいろんな事件に巻き込まれてしまうというお話です。

 

杉村三郎シリーズのここが面白い!

ネタバレをしないよう、概要だけさらっと説明すると面白さを伝えにくいですが、杉村三郎シリーズの特徴とは何か。それは人の心に潜む悪意をこれでもかというほど表面化させている点だと思います。

このシリーズは日常の些細な出来事をきっかけに、”人の悪意”があらわになっていく事件を題材にしているのですが、一般人である杉村三郎が自らの探偵能力を少しずつ開眼させながら、悪意に迫っていく様が見事です。

またシリーズを通して、宮部みゆきの特徴である精緻な人物描写・心理描写がなされており、悪意が文面からはっきりと伝わってくるのも面白い部分かなと思います。

 

杉村三郎シリーズを1作目から順番に紹介

 

1作目「誰か Somebody」

今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める―。稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。
「BOOK」データベースより引用

シリーズ1作目。主人公の杉村三郎は今多コンツェルン会長の娘婿といういわゆる逆玉であり、同グループ広報室編集者という立場にあるサラリーマンです。

ある日義父である今多嘉親会長の個人運転手を務める梶田信夫が、自転車にはねられ死亡すると言う事件が起こります。会長と、父の伝記を出したいと言う梶田の2人の娘に頼まれ、杉村三郎は特命を与えられた形で、ひき逃げ事件を独自に調べることになります。

ひき逃げ事件の真相(犯人)を探っていくのかな?と思いきや、物語は梶田の過去に焦点が当てられていき、先が読めない展開となっていきます。そして訪れる衝撃のクライマックス。完全に想定外で、良い意味で裏切られます。

 

2作目「名もなき毒」

今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。
「BOOK」データベースより引用

シリーズ2作目。今多コンツェルン広報室は、雇っていた女性アルバイトが起こす度重なるトラブルを受け、彼女を解雇することにするのですが、不当な解雇だとグループを訴えられる大事に発展してしまいます。杉村三郎はまたもや会長の命を受け、元アルバイト:原田いずみの窓口として問題対処に当たることになります。

原田いずみを調べていくに連れ、やがて彼女の嘘にまみれた経歴に行き着いた杉村は、やがてある毒殺事件の被害者と事件の真相を探り始めることとなります。

トラブルメーカーとはその程度を無視すればどこにでもいるものかと思いますが、、今回はその程度が問題ですね。共感を覚える人もいれば覚えない人もいたと思います。それくらい原田いずみはぶっ飛んでいます。

タイトルのに込められた意味も、単なる毒殺事件を指しているだけではありません。1作目にも共通しますが、最後の最後まで結末が読めない展開をお楽しみください。

 

3作目「ペテロの葬列」

今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室の杉村三郎は、ある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇する。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたが、実はそれが本当の謎の始まりだった――。 事件の真の動機に隠された、日本という国、そして人間の本質に潜む闇。杉村三郎が巻き込まれる最悪の事件。息もつかせぬ緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ。
「BOOK」データベースより引用

シリーズ3作目。編集長の園田瑛子と出張帰りにバスジャックに巻き込まれた杉村三郎。しかしバスジャック犯の老人は人質たちに向かって「後で慰謝料をお支払います」と、意外なことを言い始めます。

事件後広報室で起こるセクハラ問題、バスジャックの真相、そして杉村自身に訪れる転機-。いくつもの事件が複雑に絡み合い、これ以上ない極上のサスペンスに仕上がっています。これまでもあった人間の悪意が、前2作とは違い直接杉村にも襲いかかります。お人好しの杉村はどんな選択をするのでしょうか。

 

4作目「希望荘」

「二、三日、東北を旅行してくる」そう言い残した雑貨店の店主が安否不明に。未曽有の大災害の裏に隠された真実。シリーズ第4弾。
「BOOK」データベースより引用

シリーズ4作目は初の短編集。前作のラストで杉村を取り巻く環境は劇的に変わることになるのですが、今回は新しい環境で奮闘する杉村の姿を全4編の短編で描いています。

どれも短編であるため、前作までの長編と異なり、一つずつの事件や悪意は小粒のものが多い。しかし短編ながら宮部みゆきならではの人物描写や、杉村三郎の探偵・人としての魅力などが詰まっていて、読み応えは長編に負けず劣らず。いやそれどころか完成度はシリーズでも随一かもしれません。

 

5作目「昨日がなければ明日もない

杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザー。『希望荘』以来2年ぶりの杉村シリーズ第5弾!
「BOOK」データベースより引用

シリーズ5作目。前作「希望荘」以来2年ぶりの新作となる本作は、表題作を含む、中編3編が収録されている中編集となっています。

杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たちと銘打っているだけあり、登場人物は女性が多いです。また他の特徴としては東日本大震災という現実に起きた出来事が反映されており(作中は震災1年後)、現代社会を色濃く反映している作品でもあります。

読後感の悪さはシリーズの中でも群を抜いています。しかしこの後味も悪さも、嫌な人間をしっかり描けているからこそ強調されること、そして杉村三郎がお人好しで底なしの善人であるからこその対比であると思います。

 

終わりに

 

このシリーズに限った話ではありませんが、宮部みゆき作品の魅力の一つは「人間」を描くことに長けている点であると思っています。

 

このシリーズでは人間の悪意に焦点が当てられています。もちろん人は誰でも悪意を持ちうるものです。

 

ですが同時に、全ての人間がその悪意を表面に出すものではない、と著者は言いたいのではないかと思います。

 

主人公の杉村三郎だけでなく、喫茶”睡蓮”のマスターや編集長の園田瑛子など、周囲の人間の優しさも対比的に描かれています。

 

それがあるから、救われない・後味が悪い展開だとしても、作品としてはもう一度読みたいという気持ちにさせてくれるのです。

そんな人間の温かみを感じられるような、宮部みゆきのおすすめ作品は本シリーズ以外にもまだまだありますので、ぜひおすすめ記事からきになる作品を手に取ってみてください。

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