この記事では、私が今まで読んできた海外文学の中から、必ず読んでおきたいおすすめ海外小説を40冊紹介しています。
・海外文学の必読作品を知りたい
・色々なジャンル・作家のおすすめ小説を探したい
なお便宜上1〜40までの順番を付けておりますが、これは個人的な必読ランキングであり、作品の優劣を付けるものではありませんので、予めご了承ください。
※現状は40作品ですが、今後も紹介する作品数を増やしていく予定です。是非お楽しみにしていてください。
またここに紹介する作品の大部分が電子書籍で読むことが可能です。もちろん紙には紙の良さがありますが、安く買えたり場所を取らなかったりと電子書籍のメリットもあります。是非平行してご利用ください。
- 必ず読んでおくべき!おすすめの海外文学40選!!
- 1.『カラマーゾフの兄弟』/ドストエフスキー
- 2.『戦争と平和』/トルストイ
- 3.『モモ』/ミヒャエル・エンデ
- 4.『夏への扉』/ハインライン
- 5.『月と六ペンス』/モーム
- 6.『車輪の下』/ヘルマン・ヘッセ
- 7.『老人と海』/ヘミングウェイ
- 8.『フェルマーの最終定理』/サイモン・シン
- 9.『飛ぶ教室』/ケストナー
- 10.『高慢と偏見』/オースティン
- 11.『百年の孤独』/マルケス
- 12.『センス・オブ・ワンダー』/レイチェル・カーソン
- 13.『異邦人』/カミュ
- 14.『モルグ街の殺人』/ポー
- 15.『緋色の研究』/コナン・ドイル
- 16.『オリエント急行の殺人』/アガサ・クリスティ
- 17.『白鯨』/メルヴィル
- 18.『星の王子様』/サン・テグジュペリ
- 19.『ハリーポッターと賢者の石』/JK.ローリング
- 20.『グレート・ギャッツビー』フィッツジェラルド/
- 21.『星を継ぐもの』/ジェイムズ・P・ホーガン
- 22.『1984年』/オーウェル
- 23.『変身』/カフカ
- 24.『失われた時を求めて』/プルースト
- 25.『ライ麦畑でつかまえて』/サリンジャー
- 26.『ティファニーで朝食を』/カポーティ
- 27.『ガープの世界』/ジョン・アーヴィング
- 28.『ロング・グッドバイ』/レイモンド・チャンドラー
- 29.『若きウェルテルの悩み』/ゲーテ
- 30.『ローマ帽子の秘密』/エラリー・クイーン
- 31.『僧正殺人事件』/ヴァン・ダイン
- 32.『レ・ミゼラブル』/ユゴー
- 33.『大いなる遺産』/ディケンズ
- 34.『赤毛のアン』/モンゴメリ
- 35.『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』/フィリップ・K・ディック
- 36.『天使と悪魔』/ダン・ブラウン
- 37.『はつ恋』/ツルゲーネフ
- 38.『火刑法廷』/ジョン・ディスクン・カー
- 39.『オペラ座の怪人』/ガストン・ルルー
- 40.『不思議の国のアリス』/ルイス・キャロル
必ず読んでおくべき!おすすめの海外文学40選!!
作品を紹介する前に、今回作品を選ぶに当たってもうけた2つの縛り(ポリシー)を説明します。
1.1人の作家に対して紹介するのは1作品のみ
→自分の好きな作家の作品が集中してしまうのを避けるためです。紹介文の中で同作家の他おすすめ作品についても触れていますので、是非ご参考にしてください。
2.紹介するのは海外文学に限る
→国内小説については、以下関連記事で紹介しております。こちらもご参照ください。
1.『カラマーゾフの兄弟』/ドストエフスキー
物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。
「BOOK」データベースより引用
19世紀後半のロシアで活躍し、ロシア国内のみならず全世界の文学界に影響を与えたドストエフスキー。彼の最後の長編小説がこの『カラマーゾフの兄弟』である。
強欲な地主フョードルの遺産相続問題から物語が始まる。
タイトル通りフョードルの息子3兄弟を軸とし、彼らとその周辺人物の関係性を描いた群像小説なのだが、多くのテーマを内包しておりジャンル分けが難しい。
序盤は相続問題や3兄弟の恋愛模様を描き、中盤以降宗教や信仰に焦点を当てながら本筋の事件、そして裁判へと話が発展していく。
登場人物や相関図を理解するまでは我慢が必要だが、特に傑作とされる章「大審問官」を超えた辺りから物語の魅力にどっぷりはまっていくことが出来る。読了した時の達成感は他に類を見ないので、是非「大審問官」まで頑張って読んでほしい。
『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』と合わせて後期5大作品と呼ばれており、この4作品は丸ごと読む価値がある。
2.『戦争と平和』/トルストイ
19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入という歴史的大事件に際して発揮されたロシア人の民族性を、貴族社会と民衆のありさまを余すところなく描きつくすことを通して謳いあげた一大叙事詩。1805年アウステルリッツの会戦でフランス軍に打ち破られ、もどってきた平和な暮しのなかにも、きたるべき危機の予感がただようロシ社交界の雰囲気を描きだすところから物語の幕があがる。
「BOOK」データベースより引用
ドストエフスキーを挙げたなら、次に挙げるのはトルストイだろう。ドストエフスキーと並びロシア文学の2大巨頭であり、近代文学の最高峰の1人。
彼の代表作である『戦争と平和』は、19世紀のナポレオン戦争をベースに、貴族らのロシア社交界を描きながら国内の実情を浮き彫りにした名作で、貴族や軍人など、実に559人にも登る登場人物をまとめ上げた大群像劇。
他の代表作としては『アンナ・カレーニナ』『イワンの馬鹿』『復活』など。特に貴族の恋愛を描いた『アンナ・カレーニナ』は『戦争と平和』と並ぶ傑作として知られており、こちらも必読。
3.『モモ』/ミヒャエル・エンデ
町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作
「BOOK」データベースより引用
ドイツの誇る児童文学作家、ミヒャエル・エンデの2大代表作。ちなみにもう1つの代表作は『はてしない物語』でこちらも必読である。
人を幸せにする不思議な力を持った少女モモが、時間貯蓄銀行に奪われてしまった町の人々の大切な時間を取り戻すファンタジーである。
ファンタジー小説としてのストーリー展開、灰色の男たちとの対決シーンな見所たっぷりで、児童文学としての完成度は極めて高い。
一方で作品を通して、時間の大切さやゆとりを持つことの重要性を解いたり、はては貨幣経済のあり方に警鐘を鳴らしたりといったメッセージ性が色濃い点がこの作品のキモであり、名作と言われる所以である。
半世紀ほど前に描かれた小説であるにも関わらず、現代を生きる人々にも等しく共感される普遍性は驚嘆に値するし、子供から大人まで年代によって違う楽しみ方が出来るという観点から見ても素晴らしい小説である。
4.『夏への扉』/ハインライン
ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって「夏への扉」を探しはじめる。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、技術者の命である発明までだましとられてしまったからだ。さらに、冷凍睡眠で30年後の2000年へと送りこまれたぼくは、失ったものを取り戻すことができるのか―新版でおくる、永遠の名作。
「BOOK」データベースより引用
第三次世界大戦が起きた架空のアメリカを舞台に、タイムトラベルによって大切なものを取り戻す青春SF小説。
冷凍睡眠(コールドスリープ)を絡ませた時間旅行は、タイムトラベルによる未来の変化や過去の自身との遭遇など詳細までしっかりと練られている。作品に登場する技術要素は未来を正確に捉えており、その慧眼さに目を見張る。
作品としておよそ1950年代に執筆されたものとは思えない完成度であり、その後のタイムトラベル物の教科書となっただけでなく、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のアイディア元となったとも言われている。
SFとしての魅力は後半、特にラストになって序盤の伏線が回収されてくる段になって盛り上がりを見せるが、ロマンティックなストーリーが更に彩りを加えている。高揚感を高いレベルで味わえ、爽やかな読後感はいつ何時読んでも変わることがない。
福島正実氏の翻訳が素晴らしいので、是非訳者にも注意しながら読んでほしい。
5.『月と六ペンス』/モーム
新進作家の「私」は、知り合いのストリックランド夫人が催した晩餐会で株式仲買人をしている彼女の夫を紹介される。特別な印象のない人物だったが、ある日突然、女とパリへ出奔したという噂を聞く。夫人の依頼により、海を渡って彼を見つけ出しはしたのだが…。
「BOOK」データベースより引用
フランスの画家ゴーギャンをモデルに、元証券マンが仕事や家庭を捨て絵描きとなる生涯を描いた作品。
人は何のために生きるのか、幸せの尺度とは何か。シニカルな文調の中に”人生”という壮大なテーマが投げかけられている。
また『月と六ペンス』というタイトルに込められた意味も素晴らしい。各文庫訳者あとがきや解説でタイトルの意味を論じているので、こちらも是非読んでほしい。個人的には岩波文庫版がおすすめ。
なおモームの自伝的小説とも言える『人間の絆』も代表作であるが、こちらと合わせて読むとより作品が理解出来るのではないかと思う。
6.『車輪の下』/ヘルマン・ヘッセ
誇りと喜びにあふれて首都の神学校に入学したハンスがそこで見出したものは、詰めこみ主義の教育と規則ずくめの寄宿舎生活であり、多感で反抗的な友人の放校であった。疲れ果てて父の家に戻った彼は機械工として再び人生を始めようとするが…。重い「車輪の下」にあえなく傷つく少年の魂を描くヘッセ(1877‐1962)の永遠の青春小説。
「BOOK」データベースより引用
ドイツの片田舎に住む少年ハンスが、厳しい試験を経て神学校に入学する。
地元で神童のようにもてはやされ、周囲の期待を一心に背負うハンスだが、神学校入学後程なくして彼の生活に影がさすことになる。と言うストーリー。
この作品の最大の特徴はそのラストに凝縮されている。結末のなんとあっけなく、そして悲しいことか。
『疲れ切ってしまわないようにすることだね、そうでないと車輪の下敷きになってしまうからね』教師がハンスに説く言葉は現代社会に生きるものにも等しく通じる格言である。
勉学や仕事は何のためにするのか、人生の目的とは何か?メッセージ性の強さが現在まで語り継がれる所以であると思う。
7.『老人と海』/ヘミングウェイ
キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。
「BOOK」データベースより引用
アメリカが誇る文豪ヘミングウェイの代表作。『誰がために鐘は鳴る』『武器よさらば』など他にも名作は数知れずだが、ノーベル文学賞受賞のきっかけになった『老人と海』をチョイス。
本作はメキシコ湾で生きる老いたキューバ人漁師を描いた物語。どれだけ不漁に見舞われようと、老いて思うように体が動かなくても、それでも日々海へ出る。
漁師に牙をむく自然の脅威や、その中で必死に生活する漁師の生き様を迫力たっぷりに描写しており、漁師としてのプライドが行間からひしひしと感じられる。
光文社古典新訳文庫版は『kindle unlimited』対象作品。登録者は無料で読むことが出来る。
8.『フェルマーの最終定理』/サイモン・シン
17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが―。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション。
「BOOK」データベースより引用
数論史上最大の難問で、300年以上も全世界の数学者の頭を悩ませ続けてきた「フェルマーの最終定理」が証明されるまでの軌跡を描いたドキュメンタリー。
ある章では紀元前から脈々と続く数学の歴史を紐解き、別の章では数論の父とも呼ばれるフランス人学者ピエール・ド・フェルマーの生涯を追い、また別の章ではこの難問に挑戦した数多の数学者たちの挫折と苦悩を描く。
この作品を読むと「プロジェクトX」を思い出す。「フェルマーの最終定理」とは何か、どう証明するのかが分からなくても問題ではない。偉大なる先人たちの飽くなき探求と挑戦が丁寧に、そして情熱的に描かれた作品である。
9.『飛ぶ教室』/ケストナー
孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家ゼバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス。同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。
「BOOK」データベースより引用
ドイツの9年制高等中学に通う5人の少年達を中心に、クリスマス前後の学園で起こる様々な出来事を描いた物語。
児童文学として広く知られているが、それはナチス支配下にあった1930年代のドイツの国事情に端を発している。
児童向けとしても名作であることは間違いないが、光文社古典新訳文文庫あるいは新潮文庫版をあえておすすめしたい。
離れて暮らす家族を想い、友人たちと共に学び成長していく少年達の、素直で綺麗な心には何度読んでも胸を打たれる。大人になって読むとまさに心が洗われる感覚を味わうことが出来るだろう。
また少年達を陰ながら支える大人達の存在も、この作品を語る上では欠かせない。正義さんと禁煙さん、子供達の味方であり理解者が作品を更に味わい深いものにしている。
10.『高慢と偏見』/オースティン
溌剌とした知性を持つエリザベスと温和な姉ジェインは、近所に越してきた裕福で朗らかな青年紳士ビングリーとその友人ダーシーと知り合いになる。エリザベスは、ダーシーの高慢な態度に反感を抱き、彼が幼なじみにひどい仕打ちをしたと聞き及び、彼への嫌悪感を募らせるが…。
「BOOK」データベースより引用
19世紀初頭のイギリス地方を舞台に、誤解から始まる恋を描いた恋愛小説。
まず前提として、女性は結婚して家庭に入るもの/いかに良い家柄や相手と結婚出来るかがステータス、といった当時の時代背景を知っておく必要がある。
家柄や世間体を気にする発言は多いのはそのためであり、タイトルの『高慢と偏見』が指す通り、皮肉や辛辣な表現も特徴的。
一方ですれ違いながらも次第に惹かれ合うエリザベスとダーシー、2人だけでなく彼らを取り巻く周辺人物を含めた人物描写・心理描写の細やかさは素晴らしく、恋愛模様は時代を超えて楽しめるものだということを教えてくれる。
光文社古典新訳文庫版は『kindle unlimited』対象作品。登録者は無料で読むことが出来る。
11.『百年の孤独』/マルケス
蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら…。20世紀が生んだ、物語の豊潤な奇蹟。
「BOOK」データベースより引用
コロンビアが生んだラテンアメリカ文学の代表作家、代表作である本作『百年の孤独』を主としてノーベル文学賞も受賞している。
架空の都市マコンドを舞台に、開拓・創設したブエンディア一族の100年間に及ぶ繁栄と衰退を描いた長編である。
「近親相姦」が本作品の主要なテーマの一つとなっている。歴史を見てもスペインハプスブルク家において特徴的な顔の変形があったことは知られているが、本作品では「豚のしっぽ」が生えるというのだから驚きである。
ブエンディア一族の繁栄に伴い、様々な家族のエピソードが綴られている。似たような名前が数多くあり、家系図を繰り返し確認しながら読むことが必須であるが、その重厚さ・壮大さは他のどの文学にも無い、唯一無二の存在感を感じさせる。
12.『センス・オブ・ワンダー』/レイチェル・カーソン
子どもたちへの一番大切な贈りもの。美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性「センス・オブ・ワンダー」を育むために、子どもと一緒に自然を探検し、発見の喜びに胸をときめかせる。
「BOOK」データベースより引用
海洋生物学者の著者が、幼い甥のロジャー(正確には姪の息子)と一緒に森や海辺を探検しながら自然に触れる様子を描いており、それらを通して自然の素晴らしさや美しさに気付かせてくれる作品。
もちろん子供が読む、あるいは子供に読み聴かせる作品としても良いだろうが、著者の期待は子を持つ親がこの作品に触れることである。
センスオブワンダー、すなわち自然の神秘に目をみはる感性は年を重ねるごとに失われていってしまうかもしれないが、だからと言って自分の子供や孫に対し、その感性を養う機会を奪っていいことにはならない。
著者が学者として、環境汚染・破壊の実態を世に知らしめた『沈黙の春』もまた傑作なのでおすすめ。
13.『異邦人』/カミュ
母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。
「BOOK」データベースより引用
フランス領アルジェリアの出身、ジャーナリストや劇作家としても活躍した小説家アルベール・カミュの代表作。
非常識で不条理、主人公ムルソーの破天荒な振る舞いに共感は出来なくとも、読み終わった後思ったほど不快感を覚えていないことに驚かされる。
「きょう、ママンが死んだ。」という特徴的な書き出し(窪田啓作氏による訳)に代表されるように、作品を通してムルソーの心の機微がとても丁寧に描かれているのがその要因と言えるだろう。
そして情景描写の鮮やかさは本作品の隠れた魅力であり、カミュの特長とも言える。理不尽さや儚さといった”色の無さ“が、鮮明に描かれるフランスの豊かな自然と対比してより濃くイメージとして残るのだと思う。
14.『モルグ街の殺人』/ポー
史上初の推理小説「モルグ街の殺人」。パリで起きた残虐な母娘殺人事件を、人並みはずれた分析力で見事に解決したオーギュスト・デュパン。彼こそが後の数々の“名探偵”たちの祖である。他に、初の暗号解読小説「黄金虫」、人混みを求めて彷徨う老人を描いたアンチ・ミステリ「群衆の人」を新訳で収録。後世に多大な影響を与えた天才作家によるミステリの原点、全6編。
「BOOK」データベースより引用
ミステリーの歴史はポー以前/以後に分けられる。全ての現代推理小説の生みの親とも言われ、全世界で多大な影響を及ぼしたとされる。
日本を一例に挙げれば、彼からペンネームの着想を得た江戸川乱歩、そしてその乱歩から国内推理小説が振興していったことを見ても、ポーがもたらした影響は計り知れない。
本作はその中でも、シャーロック・ホームズの原型となったと言われている探偵オーギュスト・デュパンの初登場作品であり、密室殺人を扱った初めての作品としても広く知られている。
短編小説ながら起承転結がしっかりしており、ラストでの鮮やかな推理披露、そして意外な真犯人など、今日まで脈々と続く探偵推理小説としての型が完成されている。
オーギュスト・デュパン登場作品は実は本作品を含め3作品しかなく、続編として『マリー・ロジェの謎』『盗まれた手紙』の2作品がある。
15.『緋色の研究』/コナン・ドイル
名探偵とワトスンの最初の出会いののち、空家でアメリカ人の死体が発見され、続いて第二の殺人事件が……。ホームズ初登場の長編。
「BOOK」データベースより引用
言わずと知れた名探偵『シャーロック・ホームズ』、シリーズ最初の長編。
軍医としてのキャリアを終えたワトソンがベーカー街でホームズと出会い共同生活を送るところから、2人が初めて相対する殺人事件が描かれた作品である。
シャーロック・ホームズシリーズの中では中盤に位置するが、最初に読むべき作品とも言えるだろう。
本作品は2部構成になっており、後半は殺人事件が起こる過程に焦点を当てている。ホームズの出番は意外と少ないが、それでも推理小説でありながら冒険小説でもある本シリーズの魅力が十分に詰まった作品である。
16.『オリエント急行の殺人』/アガサ・クリスティ
真冬の欧州を走る豪華列車オリエント急行には、国籍も身分も様々な乗客が乗り込んでいた。奇妙な雰囲気に包まれたその車内で、いわくありげな老富豪が無残な刺殺体で発見される。偶然乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、すべての乗客には完璧なアリバイが……ミステリの魅力が詰まった永遠の名作。
「BOOK」データベースより引用
「シャーロック・ホームズ」と並び人気のある名探偵「エルキュール・ポワロ」。”ミステリーの女王“アガサ・クリスティによる大人気ミステリーで、『オリエント急行の殺人』はそのポワロシリーズの8作目に当たる。
もちろん1作目から読むのがベストではあるが、この作品単体で読んでも全く問題はないだろう。
寝台特急で起きた殺人事件、全ての乗客にはアリバイがある。クローズド・サークル、密室殺人とミステリー好きならワクワクが止まらないような設定。
その設定をふんだんに生かしつつ、乗客の証言から綻びを見つけ嘘を見破り、犯人を特定するまでのポワロの推理は何度読んでも惚れ惚れする。
『そして誰もいなくなった』と人気を2分する著者の代表作。シリーズでは『アクロイド殺し』『ABC殺人事件』『ナイルに死す』などがおすすめ。
17.『白鯨』/メルヴィル
船乗りのイシュメールは、宿屋で意気投合した銛手クィークェグと共に捕鯨船ピークォド号に乗り組んだ。そこにいたのは用心深いスターバック、楽天家のスタッブ、好戦的なフラスクらの運転士や、銛手のタシテゴーとダッグー。そして、自分の片脚を奪った巨大なマッコウクジラ“モービィ・ディック”への復讐に燃える船長のエイハブ―。様々な人種で構成された乗組員たちの壮絶な航海を、規格外のスケールで描いた海洋冒険巨編!
「BOOK」データベースより引用
巨大な白いマッコウクジラ”モビーディック“と捕鯨船乗組員たちによる壮絶な戦いが、乗組員の手記という形で語られる長編小説。
船長の足を食い千切り、捕鯨船を沈没させる。モビーディックの凄まじいまでの獰猛さが作品全体を暗く、陰鬱なものにさせている一因である。
また戦いの様子だけではなく、クジラの生態や伝記、果ては調理法まで様々な知識が詰め合わさっており、クジラ大全とも言える作品となっている。
それ故に長く本筋から逸れることも珍しくないが、それらの知識があるからこそ終盤でのモビーディックとの対決が映えるのだと思う。
光文社古典新訳文庫版は『kindle unlimited』対象作品。登録者は無料で読むことが出来る。
18.『星の王子様』/サン・テグジュペリ
砂漠に不時着した主人公と、彼方の惑星から来た「ちび王子」の物語。人の心をとらえて離さないこの名作は、子供に向けたお伽のように語られてきた。けれど本来サン=テグジュペリの語り口は淡々と、潔い。原文の心を伝えるべく、新たに訳された王子の言葉は、孤独に育った少年そのもの。ちょっと生意気で、それゆえに際立つ純真さが強く深く胸を打つ―。「大切なことって目にはみえない」。感動を、言葉通り、新たにする。
「BOOK」データベースより引用
サハラ砂漠に不時着した飛行士の「僕」と、小惑星から旅をしてきた「王子くん」の物語。二人のやりとりや王子くんの旅の軌跡を通して大切なものは何かを訴えかける小説である。
平易な文章・訳でありながら内容は抽象的であり、児童文学に分類されるが、子供向きというよりも大人向きなのではないか?と思わせる。
愛や絆といったものを小さな子供達に説明することは実は難しいけれど、この作品を読めばそういった目には見えない大切なものが何なのか、分かるような気がする。そう思う読者が多いからこそ、200を超える国と地域で読まれているのだろう。
キツネとのやりとりの中で、王子くんが愛することの尊さを知る場面は個人的にお気に入りのシーン。
角川文庫・岩波少年文庫など、幾つかの出版社から出ている文庫版が『kindle unlimited』対象作品。登録者は無料で読むことが出来る。
19.『ハリーポッターと賢者の石』/JK.ローリング
「ハリー、おまえさんは魔法使いだ」。その一言が、ありふれた日常を、宿命に操られる波乱の人生へと変えた。ホグワーツ魔法魔術学校で新たな生活を始めたハリーを次々と襲う闇の恐怖―。壮大な構想のもと、個性的な登場人物が織りなす感動長編の序章。勇気と信頼と友情の物語は、ここから始まる。
「BOOK」データベースより引用
近代イギリスを舞台に、魔法の存在する世界で主人公ハリー・ポッターとその仲間たちの活躍を描いた冒険ファンタジー。
史上最も売れたシリーズ作品として全世界から支持を受け、累計発行部数は5億部をゆうに超える。
魔法の呪文から作中生徒が食べるお菓子まで、膨大な量の設定が遊び心満載に練りこまれている。主人公から脇役、悪役まで非常に多くのキャラクターを操っている点も見逃せず、イマジネーションの底の知れなさにただただ驚嘆する。
またマグルと呼ばれる非魔法族との共存世界を描いている点も、他のファンタジー作品と一線を画している理由ではないだろうか。
ホグワーツ魔法学校で恋心や友情を育み、また運命に左右されながら闇の魔法使いたちとの戦いを通して成長していくハリーたち。学園モノとしても冒険モノとしても完成されたエンターテイメント作品である。
20.『グレート・ギャッツビー』フィッツジェラルド/
豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビー。彼の胸にはかつて一途に愛情を捧げ、失った恋人デイズィへの異常な執念が育まれていた……。第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描き、何度も映画化された20世紀文学最大の問題作。滅びゆくものの美しさと、青春の憂愁を華やかに謳いあげる世界文学の最高峰。
「BOOK」データベースより引用
第一次大戦後のニューヨークで一見派手な暮らしを満喫するギャツビーの知られざる苦悩を、隣家に越してきたニックの視点で描いた小説。20世紀アメリカ文学の最高峰との呼び声も高い。
ギャツビーのミステリアスな半生が次第に明らかになっていく過程に、彼の人としての魅力が詰まっている。それ以外にも友情や恋愛といった要素が絡まり、小説としての充実度が非常に高い。
作品全体としては戦後の好景気に浮き足立ちつつも、どこか荒廃的な印象を受ける描写が散見される。アメリカンドリームを連想させながらもどこか刹那的に映るギャツビーの生き方は、この時代のアメリカそのものを表しているのかもしれない。
21.『星を継ぐもの』/ジェイムズ・P・ホーガン
月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。
「BOOK」データベースより引用
月面で発見された遺体-。調査の結果5万年前に死亡されたと推測される死体の謎を解き明かすSF
小説。
驚くべき発想力と文章力(専門用語は多いが、文章は難解ではないので読みやすい)に支えられた、いわゆるハードSFに分類される作品である。
作中で謎を解き明かす科学者たちの言動は、どれだけ科学が進歩しても、過去や歴史への探究心からは逃れられないと読む者の心に訴えかけてくる。
悠久の時を超え、人類の歴史に想いを馳せることが出来る素晴らしい作品。
この作品だけでも一旦の完結はしているが、「巨人たちの星シリーズ」と総称されている続編が『ガニメデの優しい巨人』、『巨人たちの星』、『内なる宇宙』と続く。
22.『1984年』/オーウェル
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。
「BOOK」データベースより引用
全体主義国家によって支配された近未来を描いた小説で、反自由的内容からSFの中でもディストピアSFと呼ばれることもある。
全体主義の象徴ビッグ・ブラザー党、そしてレスクリーンやニュースピークといった様々な作中用語。非常に機知に富んだ設定が作品を支えており、その中で反逆によって結ばれるウィンストンとジュリアの行動にはモノクロ世界に唯一存在する色彩を感じることが出来、ワクワクが止まらない。
また本作は三部から構成されているが、第二部ラストからの展開がまさに衝撃的。読む人を選ぶ内容であるかもしれないが、冷戦期のアメリカで爆発的なヒットを記録したのも頷ける。反共産主義のバイブル的存在として、現代まで広く読み継がれている。
23.『変身』/カフカ
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか…。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。
「BOOK」データベースより引用
ある日目覚めると巨大な虫に”変身“してしまっていたザムザ。彼に襲いかかった不条理を描いた20世紀の傑作文学作品。
その荒唐無稽な展開に、今日まで様々な考察が成されている。貧しい家庭の家計を一身に背負っている事情から精神に支障をきたしてしまったのか。生活に疲れ果て引きこもってしまったのではという解釈もある。
実際に虫に変身するわけはないのだが、虫が人間の住む家を這いずり回る描写は迫力がある。また変身してしまったザムザにとっては家族が彼を取り巻く環境の全て。だがその家族の接し方が変わっていく過程は残酷ですらあり、物悲しいラストは決して読了感が良いとは言えない。
24.『失われた時を求めて』/プルースト
色彩感あふれる自然描写、深みと立体感に満ちた人物造型、連鎖する譬喩…深い思索と感覚的表現のみごとさで20世紀最高の文学と評される本作。第1巻では、語り手の幼年時代が夢幻的な記憶とともに語られる。豊潤な訳文で、プルーストのみずみずしい世界が甦る。
「BOOK」データベースより引用
「史上最も長い小説」としてギネス認定されている小説。フランス語原文で3000ページ、日本語訳では400万字にも及び、全7編から成る。
正直に言えば、私はこの小説を読破していない。だから正確にはこの本のあらすじや魅力をお伝えすることは出来ない。当ブログでは唯一と言っていい、読んでないくせに紹介をしている、のである。
訳者をして「場合によっては、最初のうちは飛ばし読みをして」と言わしめるほど、序盤は難解な読書となってしまうかもしれない。比喩が多くて分かりづらい、どういう話か分からない、とにかく長い。とネガティブになりがちだが、そのうちプルーストの世界に浸ることが出来るはず。
“読書”そのものを楽しむ、という言わば原点に立ち戻って、根気よく読み進めていこう。
25.『ライ麦畑でつかまえて』/サリンジャー
発表から半世紀、いまなお世界中の若者たちの心をとらえつづける名作の名訳。永遠の青春小説。
「BOOK」データベースより引用
高校を退学処分となってしまった少年ホールデンが、クリスマスの出来事を回想する形で世間への不満を表した青春小説。
ホールデンの不器用で真っ直ぐな感性は、まさに青春時代の真っ只中にいる10代後半〜20代前半の読者には眩しく映るだろうが、大人になるにつれその眩しさは徐々に薄れていってしまう。
読む者の年齢によってこれほど印象が変わる本も珍しいが、逆に言えば若者に支持されるという点においては普遍的な名作であるとも言える。
一方でその過激とも取れる表現や内容から世間から問題視されており、日本でも文庫版が流通していない。少し値は張るが白水社新書の村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が読みやすくおすすめ。
26.『ティファニーで朝食を』/カポーティ
第二次大戦下のニューヨークで、居並びセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他ならぬホリーだった…。表題作ほか、端正な文体と魅力あふれる人物造形で著者の名声を不動のものにした作品集を、清新な新訳でおくる。
「BOOK」データベースより引用
ニューヨークを舞台に、天真爛漫な女性の生活を、同じマンションに暮らす小説家の視点で描いた小説。
オードリー・ヘップバーン主演の映画でご存知の方も多いだろうが、原作を読むと映画とはまた違った印象を受けるだろう。
定職につかず社交界に出入りし、金持ちの男性と交際する。奔放で掴みどころのない、一方でどこか幼さも感じるゴライトリーの小悪魔的魅力に、ページを追うごとにすっかり虜になってしまう。淡く儚い非日常を見事に展開している作品。
村上春樹訳では彼のあとがきも含めて楽しめるのでおすすめ。
27.『ガープの世界』/ジョン・アーヴィング
看護婦ジェニーは重体の兵士と「欲望」抜きのセックスをして子供を作った。子供の名はT・S・ガープ。やがて成長したガープは、ふとしたきっかけで作家を志す。文章修業のため母ジェニーと赴いたウィーンで、ガープは小説の、母は自伝の執筆に励む。帰国後、ジェニーが書いた『性の容疑者』はベストセラーとなるのだが―。現代アメリカ文学の輝ける旗手アーヴィングの自伝的長編。
「BOOK」データベースより引用
20世紀後半のアメリカにおいて、ジョン・アーヴィングを一躍人気作家にした出世作。
看護師の母親と、戦争での怪我により寝たきりとなった兵士の間に出来た子供ガープの一生を綴った自伝的小説。
ガープを取り巻く環境は暴力や死といった人生における不条理の連続、けれど不思議と美しさを感じてしまう。「人生は二流のメロドラマ」作中のセリフが突き刺さる。
『ホテル・ニューハンプシャー』『熊を放つ』など作品にも共通することだが、作中に”熊“が登場するのがアーヴィング作品の特徴である。熊以外にもレスリングなど共通項があるので、是非他作品も読んでみてほしい。
28.『ロング・グッドバイ』/レイモンド・チャンドラー
私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた…大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。
「BOOK」データベースより引用
アメリカハードボイルド小説の第一人者、村上春樹やクエンティン・タランティーノなど多くの業界人が影響を受けたと言われている。
その中でも私立探偵フィリップ・マーロウのシリーズ第6作『長いお別れ』は、マーロウの魅力もさることながらミステリーとしても一級品である。
さらに終盤にかけてはセンチメンタルな感情を呼ぶ展開、まさに「エモい」ラストがシリーズ随一の評価を受ける所以であると思う。
本シリーズは村上春樹の新訳により近年再び話題になっている(日本語訳タイトルも『長いお別れ』→『ロング・グッドバイ』となっている)。シリーズ1,2作目の『大いなる眠り』、『さらば愛しき女よ』も負けず劣らずの名作なので、順番を意識するなら右記2作品を読んでからの方が良い。
29.『若きウェルテルの悩み』/ゲーテ
親友のいいなずけロッテに対するウェルテルのひたむきな愛とその破局を描いたこの書簡体小説には、ゲーテ(1749‐1832)が味わった若き日の情感と陶酔、不安と絶望が類いまれな抒情の言葉をもって吐露されている。晩年、詩人は「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、その人は不幸だ」と語った。
「BOOK」データベースより引用
18世紀に詩や小説、戯曲と多方面で活躍したゲーテによる恋愛小説。戯曲『ファウスト』でご存知の方も多いだろう。
執筆されたのは今から約250年前。このブログで紹介する作品の中でも群を抜いて「昔の」作品であるが、何よりもまず現代でもなお読まれているという事実に驚く。
主人公ウェルテルが友人ヴェルヘルムへ綴る手紙の中で、一目惚れした女性シャルロッテに対する愛情を吐露する書簡形式で描かれた小説である。
手紙の中で徐々にロッテに対する愛情が増大し、次第に精神が歪んでいく様が迫力たっぷりに描かれる。現代では受けいられぬ(“狂気”と言ってもいい)くらいの恋愛感情がウェルテルを支配していく。
ラストは一転して編者(第三者)視点で、物悲しい結末が淡々と綴られる。刊行当時社会現象まで巻き起こした中毒性の高い作品である。
本作品は『kindle unlimited』対象作品。登録者は無料で読むことが出来る。
30.『ローマ帽子の秘密』/エラリー・クイーン
ブロードウェイのローマ劇場で異常事態が発生。劇の進行中に、ほぼ満席状態の観客席から男の毒殺死体が発見されたのだ。騒然とする劇場に颯爽と現れたのは市警きっての名捜査官リチャード・クイーン警視。そしてその息子で、推理作家にして天才探偵のエラリー・クイーン。劇場から忽然と消え失せた被害者のシルクハットの謎を追う!ミステリ史に残る大傑作“国名シリーズ”が、新しいエラリー像と決定的訳出で華麗に開幕。
「BOOK」データベースより引用
20世紀に活躍したアメリカの推理小説家、エラリー・クイーンのデビュー作。実はクイーンはペンネームであり、ダネイとリー従兄弟の関係にある2人が描いているという事実は名前ほどには知られていない。
ペンネームと同名のエラリー・クイーンという探偵が作中に登場する、またこの『ローマ帽子の秘密』はタイトルに国名や地名が入る国名シリーズとしてもよく知られている。
クイーンの特徴である「読者への挑戦状」はデビュー作から炸裂。しっかりとした論理に裏付けされたフェアプレーは、多くのミステリーファンを唸らせる。
日本国内では1990年代から生まれた新本格派のミステリー作家に広く支持を得ている。この辺りの内容は個別でまとめているので、関連記事を参照してほしい。
31.『僧正殺人事件』/ヴァン・ダイン
だあれが殺したコック・ロビン?「それは私」とスズメが言った―。四月のニューヨーク、この有名な童謡の一節を模した不気味な殺人事件が勃発した。マザー・グース見立て殺人を示唆する手紙を送りつけてくる“僧正”の正体とは?史上類を見ない陰惨で冷酷な連続殺人に、心理学的手法で挑むファイロ・ヴァンス。江戸川乱歩が称讃し、後世に多大な影響を与えた至高の一品。
「BOOK」データベースより引用
精神分析学を応用し、犯罪心理を分析し真相を探る素人探偵ファイロ・ヴァンス。ヴァン・ダインが生んだ大人気シリーズの4作目に当たる。
マザーグースの童謡の内容に合致した連続殺人が題材。今日では「見立て殺人」としてミステリージャンルの1つになっているが、1920年代にこの設定を創作するその独創性と意外性が素晴らしい。
また設定もさることながら、チェスシーンの描写など文学的にも非常にレベルが高い点も、この作品がシリーズ随一と評される所以である。
国内でも江戸川乱歩が称賛しただけでなく、横溝正史が『獄門島』の着想を得るなど、大きな影響を及ぼした名作。
32.『レ・ミゼラブル』/ユゴー
わずか一片のパンを盗んだために、19年間の監獄生活を送ることになった男、ジャン・ヴァルジャンの生涯。19世紀前半、革命と政変で動揺するフランス社会と民衆の生活を背景に、キリスト教的な真実の愛を描いた叙事詩的な大長編小説。本書はその第一部「ファンチーヌ」。ある司教の教えのもとに改心したジャンは、マドレーヌと名のって巨富と名声を得、市長にまで登りつめたが……。
「BOOK」データベースより引用
1本のパンを盗んだ罪で投獄され、脱獄を繰り返したため19年も服役することになった男ジャン・ヴァルジャンの壮絶な生涯を描いた小説。
ミュージカル映画があまりにも有名だが、原作も非常にきめ細かい情景描写により、観劇に負けずとも劣らない質の高さを誇る。
ジャン・ヴァルジャンの大河小説が軸であるが、彼がマドレーヌと名を変え成功を収める過程や、彼だけでなくジャヴェールやコゼットなど彼を取り巻く周辺人物のストーリーもしっかりと補完されている。
また6月暴動に代表される民衆の王政打倒運動にも焦点を当て、19世紀当時のフランス情勢も抑えながら読み進めることが出来る。
なおここで紹介しているのは新潮文庫版(計5冊)であるが、角川文庫より上下2冊の抄訳版が刊行されている。いわゆる本筋で無い部分を省き簡略化したものであるが、初めて読む方にはもってこいのとっつきやすさとなっている。
33.『大いなる遺産』/ディケンズ
テムズ河口の寒村で暮す少年ピップは、ある日大きな屋敷に連れて行かれる。女主人の婚礼で時が止まったままのその家では、昔日の花嫁と美少女エステラが奇妙な隠遁生活を送っていた。やがて莫大な財産を約束されたピップはロンドンに旅立つ…。巨匠ディケンズの自伝的要素もふまえた最高傑作、抜群に読みやすい新訳版。
「BOOK」データベースより引用
ポンド紙幣に肖像画が描かれたこともある、イギリスを代表する作家ディケンズ。『クリスマス・キャロル』『オリバー・ツイスト』『二都物語』など、日本でもなじみ深い名作が多数ある。
中でも『大いなる遺産』は、孤児である主人公がその半生を語る自叙伝的小説で、ディケンズ自身の体験も含まれているという。
ひょんなことから莫大な遺産が主人公にもたらされることとなり、紳士になるためロンドンへ修行に出るというストーリーである。
まず原題が『Great Expectations』であることが見逃せない。原題に示唆されている「大いなる遺産」とは何なのか。
ラストまで楽しめるストーリー展開でありながら、真に大切なものは何か、英国紳士の真髄たるやを教えてくれる小説である。
34.『赤毛のアン』/モンゴメリ
ちょっとした手違いから、グリン・ゲイブルスの老兄妹に引き取られたやせっぽちの孤児アン。初めは戸惑っていた2人も、明るいアンを愛するようになり、夢のように美しいプリンス・エドワード島の自然の中で、アンは少女から乙女へと成長してゆく―。愛に飢えた、元気な人参あたまのアンが巻き起す愉快な事件の数々に、人生の厳しさと温かい人情が織りこまれた永遠の名作。
「BOOK」データベースより引用
カナダの女性作家モンゴメリによる児童文学、子供のいないカスバート家に引き取られた赤毛の孤児アンの成長を描いた物語。
続編9作品(内2作品は短編集)を含めたシリーズはアンブックスと呼ばれ、子供から大人まで楽しめる読みやすい文体と翻訳で、100年以上たった現代でも幅広い層に読まれている。
シリーズ1作目では、11歳でカスバート家に引き取られてから16歳になるまでを描いている。アンが巻き起こす様々な出来事は、不思議と周囲の人間を引きつけていく。アンの魅力だけでなく、大人になるとカスバート兄妹の実直さも感動を呼ぶ。
35.『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』/フィリップ・K・ディック
第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しか飼えないリックは、かくて火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りを始めた! 現代SFの旗手が斬新な着想と華麗な筆致で描く悪夢の未来世界!
「BOOK」データベースより引用
第三次世界大戦後のサンフランシスコを舞台に、賞金稼ぎのリックが火星から逃亡したアンドロイドを”狩る”。数々のSF小説を発表しているフィリップ・K・ディックだが、中でも代表作との呼び声が高い。
何よりも物語の設定に胸が踊る。生きた動物を所有することがステータスであり、それ故に電気動物という模造品が出回るという設定は、本筋である人間とアンドロイドの関係を暗示しており、名言と言われる本作のタイトルにも繋がっている。
両者の区別、そして関わりは物語が進むにつれシームレスになり、リックの中で境界線が曖昧になっていく。動物を持つことを夢見る”適正者”(レギュラー)、ピンボケと揶揄される”特別”(スペシャル)、そして人間に成りすますアンドロイド。三者それぞれの思惑が入りみだれる終盤の展開は複雑ではあるが、SFの醍醐味を存分に感じられる。
本作は映画『ブレードランナー』の原作(設定等大幅に変更されているので原案扱い)である。他にも『追憶売ります』(トータルリコールの原作)、『少数報告』(マイノリティ・リポートの原作)と、有名映画の原作となっている小説が複数あるので、是非読んで見て欲しい。
36.『天使と悪魔』/ダン・ブラウン
ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から電話を受け、ある紋章についての説明を求められる。それは十七世紀にガリレオが創設した科学者たちの秘密結社“イルミナティ”の伝説の紋章だった。紋章は男の死体の胸に焼印として押されていたのだという。殺された男は、最近極秘のうちに大量反物質の生成に成功した科学者だった。反物質はすでに殺人者に盗まれ、密かにヴァチカンに持込まれていた―。
「BOOK」データベースより引用
2000年代アメリカの人気作家ダン・ブラウンの代表作、ハーバード大学教授ラングドンを主人公としたシリーズものであり、続編『ダヴィンチ・コード』や『インフェルノ』も映画化されるなど有名である。
秘密結社イルミナティの設定にはフィクションも含まれているが、美術品や建造物などアートの要素も孕んだミステリーは高揚感があり、またアクションを絡めたスピード感のある展開に、上質のエンターテイメント性を感じる。
日本国内で言えば東野圭吾×原田マハのコラボ小説を読んでいるかのよう。読みやすく、飽きが来ない娯楽小説である。
37.『はつ恋』/ツルゲーネフ
16歳のウラジミールは、別荘で零落した公爵家の年上の令嬢ジナイーダと出会い、初めての恋に気も狂わんばかりの日々を過ごす。だが、ある夜、彼女のもとへ忍んで行く男を目撃、正体を知って驚愕する……。
青春の途上で遭遇した少年の不思議な“はつ恋”の物語は、作者自身の一生を支配した血統上の呪いに裏づけられて、不気味な美しさを醸し出している。恋愛小説の古典に数えられる珠玉の名作。
「BOOK」データベースより引用
ドストエフスキー、トルストイと並んでロシア文学3傑と呼ばれるツルゲーネフの代表小説。40代になった主人公が、16の時に味わった初恋を回顧する形で物語は進んでいく。
奔放で小悪魔的魅力を持つ年上の女性に一目惚れした主人公。目に見えるもの全てが色鮮やかに映り、相手の挙動に一喜一憂する。初恋の甘く切ない感情が爆発している素晴らしい文体である。
ストーリー自体は簡単に読めてしまうし、ラストはまるで三文小説のような展開ではあるにも関わらず、頻繁に課題図書に挙げられるなど高評価を得ている作品。
38.『火刑法廷』/ジョン・ディスクン・カー
広大な敷地を所有するデスパード家の当主が急死。その夜、当主の寝室で目撃されたのは古風な衣装をまとった婦人の姿だった。その婦人は壁を通り抜けて消えてしまう…伯父の死に毒殺の疑いを持ったマークは、友人の手を借りて埋葬された遺体の発掘を試みる。だが、密閉された地下の霊廟から遺体は跡形もなく消え失せていたのだ!消える人形、死体消失、毒殺魔の伝説。無気味な雰囲気を孕んで展開するミステリの一級品。
「BOOK」データベースより引用
密室王の異名を持ち、その名の通り優れた密室殺人をいくつも生み出したミステリー作家。
フェル博士シリーズ(代表作:『三つの棺』)やメリヴェール卿シリーズ(代表作:『ユダの窓』)など名探偵が登場するシリーズものも素晴らしいのだが、ノンシリーズでは圧倒的な人気を誇るのがこの『火刑法廷』。
毒殺遺体と犯人の消失というオカルト要素を孕んだミステリーであり、そのプロットもさることながら、2度は使えない、言わば捨て身のトリックが最大の特徴。
そのトリック故にシリーズ化は不可能であるのだが、同業者からの評価も非常に高いと言われている名作。
39.『オペラ座の怪人』/ガストン・ルルー
十九世紀末、パリ。華やかなオペラ座の舞台裏では奇怪な事件が続発していた。首吊り死体、シャンデリアの落下。そして、その闇に跳梁する人影…“オペラ座の怪人”と噂されるこの妖しい男は一体何者なのか?オペラ座の歌姫クリスティーヌに恋をしたために、ラウルは、この怪異に巻き込まれる。そしてその運命の夜、歌姫とラウルは、まるで導かれるように、恐ろしい事件に飲み込まれてゆく。オペラ座の地下で、闇を支配する怪人と対峙したラウルが目にした、想像を絶する光景とは?そして怪人と歌姫の真実とは?
「BOOK」データベースより引用
フランス推理小説界の草分け的存在であり、密室トリックを得意とし20世紀初頭に多くの推理小説を発表したルルー。
密室モノの中でも特に『黄色い部屋の秘密』は代表作として知られ、その密室トリックと真相解明に至る優れた論理性は海外ミステリーの鉄板として日本でも広く知られている。
ルルーはミステリー以外にもSFやファンタジーなど幅広いジャンルを扱っていたが、『黄色い部屋の秘密』と双璧を成す代表作がこの『オペラ座の怪人』である。
映画やミュージカル等で知らない人はいないほどの有名劇だが、実は原作がガストン・ルルー著だということはあまり知られていない。
前半はルルーの取材談、後半はオペラ座の怪人ことファントムの秘密を知る関係者の手記という形で物語は進行する。是非一度原作を読んでみてはいかがだろうか。
40.『不思議の国のアリス』/ルイス・キャロル
ある昼下がり、アリスが土手で遊んでいるとチョッキを着た白ウサギが時計を取り出しながら、急ぎ足に通り過ぎ、生き垣の下の穴にぴょんと飛び込みました。アリスも続いて飛び込むと、そこは…。チェシャーネコ、三月ウサギ、帽子屋、ハートの女王など、一癖もふたくせもあるキャラクターたちが繰り広げる夢と幻想の国。ユーモア溢れる世界児童文学の傑作を、原文の言葉あそびの楽しさそのままに翻訳した、画期的新訳決定版。
「BOOK」データベースより引用
少女アリスが白兎との出会いをきっかけに、不思議の国へと迷い込む冒険譚。イギリス児童文学界だけでなく全世界に広く認知され、ディズニー映画にもなった有名作品。
児童向けのファンタジー小説でありながら、アリスの独り言や会話には非常に多くの言葉遊びが含まれており、意外と難解な印象を受ける。
また残虐と思える描写も多く、ラストのオチを含めて万人受けするとは言えない作品。とはいえ世界観は唯一無二であり、現代でも非常に多くの読者がいる名作である。
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