今更ではありますが、最近中山七里のミステリーにはまっています。人気ミステリーの必須条件と言ってもいい、一度読み出したら止まらない中毒性はもちろんのこと、中山七里ワールドとでもいうべき作品の世界観に触れ、一気にファンになってしまいました。
中山七里作品にはいくつかシリーズがあるのですが、各シリーズの登場人物がシリーズを跨いで登場することで、作品同士がリンクしているというのがポイントであると思います。
この記事では、人気シリーズや鍵となる登場人物に焦点を当てながら、中山七里の作品の紹介、そして魅力に触れていきます。
中山七里の特徴
人気シリーズの紹介に入る前に、作品の特徴を3つほど紹介します。
・とにかく速筆である事
デビューは2010年、作家歴としては10年余りでありながら驚くべきはその作品数。2020年現在、単行本ベースで50作品に到達するほどです。単純計算で年4〜5冊刊行していることになりますが、これが皆さんの贔屓作家と比べていかに早く、多いことか。
また2020年1月には、作家デビュー10周年を記念し、なんと12か月連続新作単行本刊行という企画をぶち上げています。しかも出版社横断というおまけつきです。12作品の中には後ほど紹介するシリーズの最新作も含まれています。読者としてこれほど嬉しいことは無いでしょう。
・多彩なジャンル、幅広い作風
ミステリーと一口に言っても、中山七里の描くミステリーは非常に多岐に渡っています。音楽ミステリーや法廷もの、あるいは法医学の観点から事件を解決してみたりと、作品(シリーズ)によってバラエティに富んでいるのが第二の特徴です。
またジャンルが違ってもクオリティが高水準で保たれている点も評価に値すると思います。特に『岬洋介』シリーズではクラシック音楽が題材となっていますが、著者本人は音楽に関しては素人であるというのだから驚きです。それでいて迫力満点の演奏シーンを情緒たっぷりと書き上げてしまうのですから、才能とは恐ろしいものです。
・登場人物のシリーズを越えたリンク
冒頭でも述べましたが、中山七里最大の特徴と言えばこれでしょう。それぞれのシリーズの主役は刑事・弁護士・検事・解剖医と実に様々ですが、彼ら主役クラスが、別シリーズでは脇役となって登場するのです。
もちろんこの登場するという事実だけでファンにとっては嬉しいのですが、それだけでなく事件解決のポイントとなったり、複雑に入り組んだ世界観を構築しているので、非常に読み応えがあります。
中山七里の大人気シリーズを紹介
『岬洋介』シリーズ
ピアニストである主人公の岬洋介が、彼の周りで起こる事件を解決していくというシリーズです。
事件ももちろんですが、それと同等かあるいはそれ以上に力が入っている演奏シーンの描写が半端なく、特にコンクールシーンは圧巻の一言です。
刊行順=時系列ではなく、岬の学生時代の事件が5作目にきたりしています。ですが時系列ではなく以下の刊行順通りに読んだ方が楽しめると思います。
1.さよならドビュッシー(2010)
2.おやすみラフマニノフ(2010)
3.要介護探偵の事件簿(2011)※スピンオフ短編集
4.いつまでもショパン(2013)
5.どこかでベートーヴェン(2016)
6.もういちどベートーヴェン(2019)
7.合唱 岬洋介の帰還(2020)
8.おわかれはモーツァルト(2021)
『弁護士 御子柴礼司』シリーズ
どんな弁護であろうと減刑・無罪を勝ち取る凄腕弁護士が主人公の法廷ミステリー。個人的に数ある中でも一番好きなシリーズです。
血も涙もないように見える主人公の御子柴弁護士が、自らが過去に起こした事件とも向き合いながら弁護を進めていきます。法廷での弁論は毎回手に汗握る展開で、否応なく引き込まれてしまいます。
実の母親、恩師を弁護する3、4作目が特に必見で、シリーズを追うごとに面白くなっていきます。以下刊行順です。
1.贖罪の奏鳴曲(ソナタ)(2011)
2.追憶の夜想曲(ノクターン)(2013)
3.恩讐の鎮魂曲(レクイエム)(2016)
4.悪徳の輪舞曲(ロンド)(2018)
5.復讐の協奏曲(コンチェルト)(2020)
6.殺戮の狂詩曲(ラプソディ)(2023)
なおこの『弁護士 御子柴礼司』シリーズに負けずとも劣らない法廷ミステリーシリーズが柚月裕子氏の佐方貞人シリーズです。興味を持った方は是非読んでみてください。
『ヒポクラテス』シリーズ
法医学教室に派遣された研修医栂野真琴と彼女の上司である解剖医光崎教授が主人公の法医学ミステリー。検視では発見できない些細な事象を解剖によって発見し、事件解決への糸口を見つけていきます。
解剖だけあってグロいシーンがかなり多いです。文字とはいえ結構迫力あるので注意が必要。ただそれを差し引いても個性豊かな登場人物による掛け合い、予想外の展開など楽しめる場面が多く、個人的には解剖シーンは気にならずサクサク読めてしまいました。
1.ヒポクラテスの誓い(2015)
2.ヒポクラテスの憂鬱(2016)
3.ヒポクラテスの試練(2020)
4.ヒポクラテスの悔恨(2021)
同じく法医学の一分野に分類される「法医昆虫学」を題材としたミステリーが存在します。グロさは『ヒポクラテスシリーズ』の比にならないくらいものすごいです。興味がある方は是非以下記事をご覧ください。
『刑事 犬養隼人』シリーズ
警視庁捜査一課のベテラン刑事犬養隼人が主人公。女には弱いのに男の嘘は見抜くことが出来るという変わった特技を生かしつつ、相棒の高千穂ら仲間とともに事件解決をしていきます。
こちらもヒポクラテスシリーズに負けず劣らず凄惨な殺人事件、それに伴うグロい描写が多いのが特徴です。なお4作目の『ドクター・デスの遺産』は綾野剛さん北川景子さん主演で2020年11月に映画化されました。
1.切り裂きジャックの告白(2013)
2.七色の毒(2013)
3.ハーメルンの誘拐魔(2016)
4.ドクター・デスの遺産(2017)
5.カインの傲慢(2020)
6.ラスプーチンの庭(2021)
その他の登場人物
その他、主人公としてシリーズ化されているわけではないのですが、複数シリーズで重要な役割を担っている人物をいくつか挙げたいと思います。同時に彼らが主役として登場する作品にも触れていきます。
・埼玉県警 古手川和也
埼玉県警捜査一課の古手川和也は多くのシリーズに登場するキーマンで、上司の渡瀬とともに累計では最多登場なのではないかと思うくらいよく顔を出します。著者自身のお気に入り人物のようで、今後も複数作品への登場が予想されます。以下、主な登場作品です。
・連続殺人鬼カエル男(2011)
・連続殺人鬼カエル男ふたたび(2018)
・魔女は甦る(2011)
・切り裂きジャックの告白(2013)※犬養隼人シリーズ
・テミスの剣(2014)
・贖罪の奏鳴曲(2011)※御子柴礼司シリーズ
・ヒポクラテスの誓い(2015)※ヒポクラテスシリーズ
・ヒポクラテスの憂鬱(2016)※ヒポクラテスシリーズ
・ネメシスの使者(2017)
・合唱 岬洋介の帰還(2020)※岬洋介シリーズ
この中でも特に『連続殺人鬼カエル男』、『テミスの剣』はオススメです(テミスの剣は渡瀬が主人公ですが)。それぞれ『連続殺人鬼カエル男ふたたび』、『ネメシスの使者』と続編に相当する作品がありますので、合わせて読むことをオススメします。
・(元)女性裁判官 高円寺静
高等裁判所判事の高円寺静も、登場作品こそ多くないですが、その役職と、それに見合った知的な振る舞いとで人気があり、かつ重要な人物です。
ある時は短編集にて探偵として、別の作品では裁判官、あるいは引退した女性教官として登場するなど、いくつかの顔を持っているのも特徴と言えるでしょう。
・静おばあちゃんにおまかせ(2012)※短編集
・テミスの剣(2014)
・静おばあちゃんと要介護探偵(2018)※短編集
・もういちどベートーヴェン(2019)※岬洋介シリーズ
終わりに
中山七里の人気シリーズまとめ記事、いかがでしたでしょうか。シリーズ内の順番は刊行順に読んだ方がいいですが、どのシリーズから読んでも楽しめると思いますので、気になったものから手に取って読んでみてはいかがでしょうか。
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