新時代を象徴する若き文豪!朝井リョウのおすすめ小説10作品を紹介!

この記事では、人気作家朝井リョウのおすすめ小説を紹介します。

早稲田大学在学中、若干二十歳での小説すばる新人賞受賞と小説家デビュー。23歳での直木賞受賞は戦後最年少であり、史上初の平成生まれの受賞者となるなど、まさに平成〜令和の新時代を象徴する作家と言えます。

そんな朝井リョウの小説をデビュー作から最新作まで、厳選して10作品紹介していきます。

ここに紹介する作品の大部分が電子書籍で読むことが可能です。もちろん紙には紙の良さがありますが、安く買えたり場所を取らなかったりと電子書籍のメリットもあります。是非平行してご利用ください。

朝井リョウのおすすめ小説10選を紹介する

紹介する順番についてはあくまでも個人の所感となっておりますので、予めご了承ください。

 

1.『正欲』(2021)

生き延びるために、手を組みませんか。いびつで孤独な魂が、奇跡のように巡り遭う――。あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ――共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 絶望から始まる痛快。あなたの想像力の外側を行く、作家生活10周年記念、気迫の書下ろし長篇小説。
「BOOK」データベースより引用

世の中には極めて珍しい性的欲望を持った人間が存在する。本作は人と違うことに悩み、苦しみながら生きていくマイノリティたちに焦点を当て、昨今の多様性社会に一石を投じる内容となっている。
個人の生き方や価値観に柔軟な世の中になったとは言え、「多様性」という言葉の意味を深層では理解出来ていない自分に気づかされる。
作品の中で一つの事件を扱っているが、冒頭と結末ではその事件に対する見方がまるっきり変わっていることだろう。まさに強烈な読書体験を与えてくれる。
綿密な取材努力を伺わせる豊富な知識、対物性愛に悩む人たちのリアルな心理描写、やがて一つの事件へと発展させていくストーリー構成、著者の作家生活が全て凝縮された作品。


 

2.『何者』(2012)

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。
「BOOK」データベースより引用

平成生まれとして初&戦後最年少での受賞と、まさに記録ずくめの第148回直木三十五賞受賞作品。
大学生たちの就職活動を通して、今時の若者のリアルを描いた群像劇となっており、
現代では必須のコミュニケーションツールとなったSNSの投稿や、冒頭にある人物紹介もSNSのプロフィール調になってたりとリアルさが追求されている。
作品の大部分がセリフとSNSの投稿で占められており非常に読みやすく、人間が心のうちに秘めている腹黒さのようなものをしっかりと表現しているため、決して読後感は良いとは言えないが、終盤に伏線回収されてから展開される登場人物たちによる会話の応酬は迫力も十分。
続編に当たる『何様』と合わせて読むとより楽しめる。


 

3.『桐島、部活やめるってよ』(2010)

田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。
「BOOK」データベースより引用

早稲田大学在学中に小説すばる新人賞を受賞した衝撃のデビュー作
田舎の高校を舞台に、男子バレー部主将の桐島が部活動を辞めるという”事実”が、同じ高校内の生徒によって語られていく、連作短編集。
桐島自身が物語の中に登場することは無く、高校の中で起こった小さな”事件”として扱われる。物語の登場人物が思春期の真っ只中で何を思い生きるのか、青春群像劇と言えるこの作品のテーマ、そしてタイトルに非凡なセンスを感じる。
また若干二十歳の学生が描いたとは思えない色彩豊かな情景描写、子供と大人の狭間を生きる高校生たちのリアルな心理描写も総じて素晴らしく、その後の活躍も納得のデビュー作品と言えるだろう。


 

4.『スペードの3』(2014)

有名劇団のかつてのスター“つかさ様”のファンクラブ「ファミリア」を束ねる美知代。ところがある時、ファミリアの均衡を乱す者が現れる。つかさ様似の華やかな彼女は昔の同級生。なぜ。過去が呼び出され、思いがけない現実が押し寄せる。息詰まる今を乗り越える切り札はどこに。屈折と希望を描いた連作集。
「BOOK」データベースより引用

とある舞台女優と、彼女のファンクラブメンバーたちの活動を通して、女性の鬱屈した感情を描いた作品。
章ごとに一人称は変わるものの、作品を通して女性特有の同性に対するプライドや考え方を見事に言語化していることに驚かされる。一つ一つの章は短編ながらも、ラストに盛り上がりを持ってくる構成力も見事。
またそれぞれのタイトルにも工夫が凝らされている。表題作をはじめ、登場人物をトランプのカードに例える点もこの作品の女性らしさを体現しているのかもしれない。


 

5.『チア男子!!』(2010)

大学1年生の晴希は、道場の長男として幼い頃から柔道を続けてきた。だが、負けなしの姉と比べて自分の限界を悟っていた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部する。同時期に部をやめた幼なじみの一馬に誘われ、大学チア初の男子チームを結成することになるが、集まってきたのは個性的すぎるメンバーで…。チアリーディングに青春をかける男子たちの、笑いと汗と涙の感動ストーリー。
「BOOK」データベースより引用

大学初、男子だけのチアリーディングに挑む男子大学生たちを描いた爽やかな青春小説。
著者の母校である早稲田大学に存在する男子チアチーム「SHOCKERS(ショッカーズ)」がモデルとなっており、そのストーリー展開はウォーターボーイズを想起させる。
現代の若者らしいテンポの良い会話をちりばめながら、恋や友人関係、家族の問題、メンバーそれぞれの苦悩にも触れている。それでいて男子チアチームの成功という物語の軸は最後までブレることがない。
デビュー2作目。多少荒削りながらラストの選手権の描写は迫力満点で、他の朝井作品には無い熱量を感じられる作品。


 

6.『スター』(2020)

新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応――作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。朝日新聞連載、デビュー10年にして放つ新世代の長編小説。
「BOOK」データベースより引用

映像業界での成功を夢見る二人の若者の、それぞれの将来へのアプローチを対比的に現すことで、映像業界が直面している環境変化にスポットを当てた作品。
YouTubeやオンラインサロンといった現代のプラットフォームを作品に取り込んでいる点はさすが朝井リョウで、作品としてのテーマもはっきりしている一方業界柄作品の持つエンタメ要素も強い。
クリエイティブな職業の、決して華やかだけではない一面や、日々進化する環境に携わる人々の苦悩にも触れた良作。


 

7.『もういちど生まれる』(2011)

彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遙。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。
「BOOK」データベースより引用

デビュー4作目の本作は、デビュー作『桐島、部活やめるってよ』を彷彿とさせるような、若者の心情を描き出した連作短編集。
登場人物が短編ごとにリンクし、物語としての繋がりが感じられる構成になっているのは『桐島』と同様。ただ高校生を題材にしていたデビュー作とは異なり、都会に暮らす大学生がメインとなっている。
一つの作品として一貫しているのは他者との比較。この年代が感じる悩みや不安がストレートに描かれていて、同年代には是非読んでほしい作品となっている。
もちろん、学生時代を思い出したい社会人にも等しくおすすめ出来る作品である。


 

8.『ままならないから私とあなた』(2016)

天才少女と呼ばれ、成長に従い無駄なことを切り捨てていく薫と、無駄なものにこそ人のあたたかみが宿ると考える雪子。すれ違う友情と人生の行方を描く表題作。男が先輩の結婚式で出会った美女は、人間関係を「レンタル」で成立させる業者だった―「レンタル世界」。既存の価値観を心地よく揺さぶる二篇を収録。
「BOOK」データベースより引用

『レンタル世界』と『ままならないから私とあなた』、2編のありそうでない世界を描いた中編を収録した作品。
『レンタル世界』はコンセプト自体は他メディアでも扱われるなどありふれているが、『何者』にも共通する心情描写とどんでん返しが心臓に悪く、だがクセになる。
『ままならないからー』に関しても苦い読後感が共通している。文庫本に加筆された結末を読むとまた印象が変わってくるので、ラスト1章を意識しながら読んだほうが良い。


 

9.『世にも奇妙な君物語』(2015)

異様な世界観。複数の伏線。先の読めない展開。想像を超えた結末と、それに続く恐怖。もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずに―では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」。
「BOOK」データベースより引用

タイトルから予想出来るように、某有名テレビ番組と同じく不気味でホラーな5つの物語を収録した短編集。
人の悪意を物語のキーに据え恐怖感を煽るオチは素晴らしく、若干弱いのではと思われるものもあるが、特に『シェアハウさない』は秀逸の出来。
いずれにしろ作者の作品の幅を広げる一冊である事は間違いない。


 

10.『星やどりの声』(2011)

東京ではない海の見える町で、喫茶店「星やどり」を営む早坂家。三男三女母ひとり。亡き父が残した名物のビーフシチューの香りに包まれた生活には、慎ましやかながらも確かな幸せがあった。しかし、常連客のおじいちゃんが店に姿を見せなくなった頃から、家族に少しずつ変化が。各々が葛藤を抱え息苦しくなる早坂家に、父が仕掛けた奇跡が降りそそぐとき、一家は家族を卒業する。著者が学生最後の夏に描いた、感動の物語。
「BOOK」データベースより引用

建築士だった父親の死後、母親と6人の子供達が父の遺した喫茶店と想い出を守りながら生きていく、家族の物語。
3男3女、6人の視点から物語が紡がれる連作短編集であり、青春小説から家族ドラマへ、作者の挑戦が感じられる作品。
子供達による会話は少しばかり現実味を欠くのでは、と思うシーンもあるが、ラストは家族のを感じられるロマンチックな内容となっている。


 

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