ブランチBOOK大賞受賞作品が名作揃いだったので過去10年分の受賞作を調べてみた

小説

Amazonなんかで読みたい本を漁っていると、「第〇〇回直木賞受賞」とか、「本屋大賞受賞」とかいうワードをたまに見かける。

受賞作品だけ毎回(毎年)読んでいる、なんて人も多いだろう。賞金も大きいだろうが、作品を広く認知してもらうという点において、賞を取るというのは作家にとってものすごく大きいことだと思う。

で、その中に「ブランチBOOK大賞」というワードがある。これってなんだ?と調べてみたら色々面白いことが分かってきたので、今回は「ブランチBOOK大賞」について色々調べたことを語ってみたい。

 

“ブランチBOOK大賞”とは

そもそも「ブランチBOOK大賞」とは何か。名前から察する人もいるだろうが、TBS系列『王様のブランチで紹介された本の中から、その年の1番を決めるという賞のことなのである。

土曜日の昼帯の人気番組ということもあり、正式な文学賞ではないにもかかわらず、影響力は中々に大きいことで近年注目を浴びている。

事実、後述するが「ブランチBOOK大賞」を受賞した作品は、その後名だたる文学賞を受賞していることが多い。メディアの影響力は凄いなと改めて思う。

ちなみに現在の「ブランチBOOK大賞」は、過去にいくつか名称を変えている。過去の変遷は以下の通り。

・「輝く!ブランチBOOK大賞」:2002-2008
・「ブランチコメンテーターが選ぶベスト本」:2010
・「ブランチブックアワード」:2011-2016
・「ブランチBOOK大賞」:2017-

最初は選考委員が公開されていたが、現在は非公開となっている。番組スタッフが選考しているのかな?と勝手に推測している。

 

過去の受賞作を紹介

それではここで2010年代の受賞作品を、最新年から紹介していく。どれも名作揃いなので一読の価値あり。

 

・2019年:『線は、僕を描く』/砥上裕將

水墨画という「線」の芸術が、深い悲しみの中に生きる「僕」を救う。第59回メフィスト賞受賞作。
「BOOK」データベースより

両親の死に直面し、悲しみに暮れる大学生が、ひょんなことから水墨画の世界に入り込んでいく。

いきなり弟子と勝負とか漫画みたいな展開だなあと思ったら、本当に漫画化されていて驚いた(少年マガジンで連載中)。

とはいえ展開が漫画みたいというのであって、クオリティが低いわけでは決してない。水墨画を言葉で説明する表現力は確かだし、何よりこれがデビュー作というのにまた驚く。次回作以降も期待したい。

 

・2018年:『そして、バトンは渡された』/瀬尾まいこ

血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった森宮優子、十七歳。だが、彼女はいつも愛されていた。身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。
「BOOK」データベースより

死別や離婚、転勤などで親が何回も変わり、本当の家族がいなくなった女子高生を主人公に、家族や幸せの形を問う物語。

お世辞にも幸せとは言い難い境遇に置かれても、主人公はあっけらかんとしており、物語全体も淡々と進んでいく印象を受ける。

終盤にかけては主人公が自分なりの幸せを掴み、ほっこりするし爽やかな読後感も味わえる。非常に読みやすい作品。

 

・2017年:『かがみの孤城』/辻村深月

どこにも行けず部屋に閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然、鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先の世界には、似た境遇の7人が集められていた。9時から17時まで。時間厳守のその城で、胸に秘めた願いを叶えるため、7人は隠された鍵を探す―
「BOOK」データベースより

タイトルから推測の通り、鏡の中の世界を舞台にした、現実とファンタジーが入り混じる物語。

序盤から不登校の中学生を丁寧な感情描写で描くことで感情移入させられ、最後はまんまと泣いてしまう。重いテーマではあるが読後感は良い。

どこかのレビューでも見かけたが、「スロウハイツの神様」に迫る、辻村作品でも1,2を争う名作なのではないかと思う。

 

・2016年:『みかづき』/森絵都

昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い―。山あり谷あり涙あり。昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編!
「BOOK」データベースより

昭和〜平成の日本、親子三代に渡って学習塾を経営した家族の物語であり、登場人物を通して日本の教育の在り方に切り込んだ小説。

軽く50年以上の歳月を通し、親子三代の物語を描いているので、物語自体も長編だし、スケールがとてつもなく壮大。登場人物がそれぞれの時代背景にあったキャラ設定がされているなと感じる。

読み終わった時にはすごく体力を消耗しているでしょう。同時に読みきった達成感がものすごい。読み応えのある小説。

 

・2015年:『羊と鋼の森』/宮下奈都

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。
「BOOK」データベースより

物静かで、外界との接触は必要最低限な青年が、ピアノ調律師としての仕事を通して、職場や顧客との繋がりを持ち、成長していく。

最初は主人公の仙人かというような性格に感情移入できず、ダメか!?と思うのだが、調律師になってからは心が開かれていく様子がバシバシ伝わってきて、ページをめくる手が止まらなくなる。

加えてピアノ調律師のお仕事紹介としての付加価値も高い。ラストは心温かる終わり方だし、優しい気持ちになれる作品です。

 

・2014年:『かたづの!』/中島京子

慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊が、八戸南部氏20代当主である直政の妻・祢々と出会う。羚羊は彼女に惹かれ、両者は友情を育む。やがて羚羊は寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助けする一本の角―南部の秘宝・片角となる。平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。その影には、叔父である南部藩主・利直の謀略が絡んでいた―。次々と降りかかる困難に、彼女はいかにして立ち向かうのか。波瀾万丈の女大名一代記!
「BOOK」データベースより

江戸時代初期の岩手を舞台に、南部氏の女当主の生き様を描いた歴史系ファンタジー小説。

タイトルのかたづのの意味はすぐ分かるのだが、ものすごいメルヘンの中に綿密な考察を基にした歴史小説が混ざっていて、なんとも言えない気持ちになる。

それでも全体のバランスが崩れていないどころかユニークな小説ながらも非常に完成度が高いのは、著者の文章力、構成力の素晴らしさによるものでしょう。

 

・2013年:『昨夜のカレー、明日のパン』/木皿泉

7年前、25歳で死んでしまった一樹。遺された嫁・テツコと今も一緒に暮らす一樹の父・ギフが、テツコの恋人・岩井さんや一樹の幼馴染みなど、周囲の人物と関わりながらゆるゆるとその死を受け入れていく感動作。本屋大賞第二位&山本周五郎賞にもノミネートされた、人気夫婦脚本家による初の小説。書き下ろし短編「ひっつき虫」収録!
「BOOK」データベースより

脚本家である著者の小説デビュー作、そう言われてみれば、脚本家のいい感じに客観的なところが垣間見れるなと感じる。

若くして夫を無くし、義父と暮らす未亡人が主人公と、設定はかなり重いのだが、物語はどちらかというとコメディっぽい、軽いノリで進んでいく。

最後はしっかり感動させられる。日常の何気ないことが幸せだなと思える作品。

 

・2012年:『楽園のカンヴァス』/原田マハ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。山本周五郎賞受賞作。
「BOOK」データベースより

ルソーやピカソの絵を題材にしたアートミステリー。アートに詳しい人はもちろん、詳しくない人でも十分楽しめる程物語の質が高い。

暗幕のゲルニカ」をはじめ著者のその他アート小説を読むと、芸術に対する愛がとても伝わってくる。その他のジャンルももちろん好きだけど、このジャンルが一番書きたいものなんだろうなと思う。詳しくは個別記事参照

 

・2011年:『マザーズ』/金原ひとみ

同じ保育園に子どもを預ける三人の若い母親たち―。家を出た夫と週末婚をつづけ、クスリに手を出しながらあやういバランスを保っている“作家のユカ”。密室育児に疲れ果て、乳児を虐待するようになる“主婦の涼子”。夫に心を残しながら、恋人の子を妊娠する“モデルの五月”。現代の母親が抱える孤独と焦燥、母であることの幸福を、作家がそのすべてを注いで描きだす、最高傑作長篇。
「BOOK」データベースより

3人の、幼い子供を持つ若い母親を主人公に、”母であること”と”女であること”の狭間で揺れ動く感情を書き綴った小説。

金原ひとみと言えば蛇にピアス、という人は多いだろう。著者の小説を読むのはそれ依頼でした。

メンタルの危うさだったり、揺れ動く心情をうまく描写しているのは見事。ただし生々し過ぎるというか(下劣と言っているレビュアーも多い)、その辺は読む人を選ぶ作品。

 

「ブランチBOOK大賞」と「本屋大賞』の相関関係

勘の良い方はお気づきかもしれない。冒頭で述べた通り。「ブランチBOOK大賞」受賞作品は、名だたる文学賞を受賞しているケースが多々あるのだが、その中でも「本屋大賞」との相関性が非常に高いと思う。

参考までに過去の受賞作を見てみよう。

・2019:『僕は、線を描く』⇨2020年本屋大賞ノミネート(第3位)
・2018:『そして、バトンは渡された』⇨2019年本屋大賞受賞(第1位)
・2017:『かがみの孤城』⇨2018年本屋大賞受賞(第1位)
・2016:『みかづき』⇨2017年本屋大賞ノミネート(第2位)
・2015:『羊と鋼の森』⇨2016年本屋大賞受賞(第1位)

本屋大賞に5年連続3位以内ノミネート、さらに5回中3回は本屋大賞受賞って凄まじい的中率。

さらに凄いのが、「ブランチBOOK大賞」が本屋大賞のおよそ3~4ヶ月前に発表されているということ。

もはや本屋大賞の選考員である全国の書店員はみんな「王様のブランチ」を見て決めているんじゃないかとさえ思える的中率っぷり。

まあ実際にはそんなことはありえない(影響を多少なりとも受けることはあっても)んだから、いかにブランチの選考員が見る目があるか、ということになる。

今後も毎年年末に発表されるであろう「ブランチBOOK大賞」。その受賞作から翌年春に発表される「本屋大賞」の受賞作が予想できるかもしれない。

 



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