絶対に面白い!三浦しをんのおすすめ小説10選をまとめて紹介する

小説家・随筆家として活躍されている作家三浦しをん

 

直木賞や本屋大賞といった受賞歴を誇り、多くの作品がメディア化されている売れっ子作家と言えます。

 

そんな幅広い年代から支持される三浦しをん作品の中でも、個人的に面白いと思うトップ10を紹介していきます。

 

1.『舟を編む』(2011)

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!
「BOOK」データベースより引用

平凡な出版社の営業社員が、とあるきっかけで自らの持つ言葉へのこだわり・センスを見出され、辞書編集に携わることになる。
辞書編集という特殊な仕事をうまくストーリーに組み込み、生きた言葉を扱うことの難しさや言葉の持つ暖かさに触れた、文学作品としての魅力に溢れた作品。
また主人公を始め登場人物の魅力も本作を語る上では欠かせない。
人生をかけてひたむきに仕事に取り組む姿勢は自らを変えるだけでなく、周囲を動かすことも出来るのだと考えさせられる作品である。


 

2.『風が強く吹いている』(2006)

箱根駅伝を走りたい―そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく…風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」―純度100パーセントの疾走青春小説。
「BOOK」データベースより引用

大学の寮に住む学生たちがたった10人で箱根駅伝を目指すという青春ストーリー。
たった10人で箱根駅伝を走ることは陸上経験者であれば理解しがたい設定かもしれない。それでも長距離競技、ひいては走るという行為に対してとても誠実な文章であり、加えて箱根のコースも隅々まで調べ尽くされていることが分かる。
また登場人物10人それぞれに、陸上に対する想いや背景(ドラマ)があり、要所要所で泣かされる。
小説の価値は文学賞だけで測れるものではないことは重々承知の上で、それでもこの作品が無冠であることが信じられない。上記『舟を編む』と並び大好きな作品。

 

3.『まほろ駅前多田便利軒』(2006)

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。
「BOOK」データベースより引用

架空の都市まほろ市で便利屋を営む多田と、十数年ぶりに再開した中学時代の友人行天の2人が、便利屋に舞い込む依頼を解決していく。
変人と言われる仰天は勿論の事、主人公の多田もなかなかな曲者ぶりであるが、彼ら2人の人物描写を丁寧に行うことで、彼らの取り組む事件の特異性や非日常感もすんなりと入ってくる。
また瑛太と松田龍平が演じる映画がまた面白い。町田市がモデルに、住宅街と歓楽街が同居する街で、キナ臭い依頼の真相に辿り着くと見えてくる人間模様がまた興味深い。

「まほろ駅前シリーズ」一覧

1.『まほろ駅前多田便利軒』(2006)
2.『まほろ駅前番外地』(2009)
3.『まほろ駅前狂騒曲』(2012)


 

4.『ののはな通信』(2018)

横浜で、ミッション系のお壌様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。不器用にはじまった、密やかな恋。けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ…。運命の恋を経て、少女たちは大人になる。女子の生き方を描いた傑作小説。女子校で出会い、運命の恋を得た少女たちの20年超を、全編書簡形式で紡いだ、女子大河小説の最高峰。
「BOOK」データベースより引用

ミッション系の女子校に通う少女たちの恋愛を描いた作品。2018年度島清恋愛文学賞を受賞している。
驚くべきは文庫本にして500ページを超える大作が全て2人の手紙で構成されている点。いわゆる書簡小説の形式をとっているのだが、このジャンルでこれほどの長編は見たことがない。
加えて本作は、女性同士の恋愛をテーマにしつつも、彼女たちの成長によって変化してゆく関係性に焦点を当てた大河小説でもある。
昭和から平成へ、手紙からメールへ。時代が移り変わることで変わるものもあれば、変わらないものもある。
これを読み終わった後、いつもは心の奥底にしまっている誰かへの想いを、そっと開けることになるかもしれない。


 

5.『神去なあなあ日常』(2009)

美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。
「BOOK」データベースより引用

三重県中西部のとある村を舞台に、横浜の高校を卒業したばかりの主人公が手違いで林業見習いとして働くことになる、というストーリー。
なあなあとは神去村の方言(口癖)で、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」というニュアンスを持っている。
最初は慣れない田舎に反発しながらも、次第に林業に魅了されていく都会っ子の主人公。
彼の人間的成長がゆったりとした語りで紡がれていくだけでなく、村の人々との交流が暖かく描かれた作品。

「神去シリーズ」一覧

1.『神去なあなあ日常』(2009)
2.『神去なあなあ夜話』(2012)


 

6.『墨のゆらめき』(2023)

都内の老舗ホテル勤務の続力(つづき・ちから。通称チカ)は、パーティーの招待状の宛名書きを依頼するため、書家・遠田薫の自宅兼書道教室を初めて訪ねた。副業として手紙の代筆もしている遠田に無茶振りされ、なぜか文面を考えることになるチカ。その後も遠田から呼び出され、代筆の片棒をかつぐうち、チカは人の思いをのせた文字と書に惹かれていく……。
「BOOK」データベースより引用

ホテルマンの主人公が、招待状の宛名書きの縁で出会った書道家と代筆屋の”副業”を始めることになる。
破天荒な性格ではあるが実力は確かな書道家に振り回されながら、徐々に書が持つ力に魅せられていく。
新潮社とAmazon(オーディブル)の共同企画のために書き下ろされた小説である。オーディブルで先行して配信された後書籍が刊行される、という非常に珍しい形式で出版された。
会話・地の文ともに心地良い軽さであり、朗読版も非常に耳障りが良い。隙間時間の”聴”書としてもおすすめの作品。


 

7.『仏果を得ず』(2007)

高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜になる。以来、義太夫を極めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝をつかんでいく―。若手大夫の成長を描く青春小説の傑作。
「BOOK」データベースより引用

修学旅行をきっかけに人形浄瑠璃の太夫を志すこととなった若き青年の物語。
そもそも「人形浄瑠璃・文楽」とは何か?知らない人間にも分かるよう丁寧かつ過不足なく説明されているし、舞台上の芸の様子や、演者の感情の揺れ動きといった描写も光る。
多くの人々には縁のない古典芸能の世界で生きる現代人がどうあるべきかを問いかけつつも、主人公が恋に悩みつつ芸を磨いていく青春小説としての魅力を失わない、素晴らしい作品。


 

8.『愛なき世界』(2018)

恋のライバルが、人類だとは限らない!? 洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。愛おしい変わり者たちと、地道な研究に人生のすべてを捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか
「BOOK」データベースより引用

大学院で植物学を学ぶ女性と、大学近くの飲食店で見習いとして働く男性。若き男女の恋模様を描いた小説。
かっちりとした恋愛小説ではなく、どこか浮世離れした2人のほんわかラブコメディといった感覚で、良い意味で”軽い”文体がストーリーと完璧にマッチしている。
また本作品で、著者は作家としては初めてとなる日本植物学会賞特別賞を受賞している。もう一つのテーマでもある「植物学の研究」についても、平易な文章で研究の魅力に触れるという離れ業をやってのけている。
何かに熱中する若者たちの、愛への価値観の変遷を感じることが出来る作品。


 

9.『政と源』(2013)

東京都墨田区Y町。つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが―。当年とって七十三歳の国政と源二郎は、正反対の性格ながら、なぜか良いコンビ。水路のある下町を舞台に老人パワーを炸裂させるふたりの、痛快で心温まる人情譚!
「BOOK」データベースより引用

東京都墨田区に暮らす2人の老人の日常を描いた、下町情緒にあふれる物語。
作品のタイトルは2人の名前(主人公で銀行を退職した国政と、つまみ簪職人の源二郎)から来ている。生い立ちや家族構成、仕事と共通点は何一つとしてないが、不思議と息ぴったりな良いコンビが、下町を所狭しと駆け巡る。
老い先短い人生には寂しさや悲しさがついてまわるものだが、ライトな文体とユーモアが不思議とそれを浄化させる。
加えてこの歳になっても唯一無二の存在がいることの素晴らしさも感じる、心温まる作品である。


 

10.『木暮荘物語』(2010)

小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年。空き室あります!安譜請ですが、人肌のぬくもりと、心地よいつながりがあるアパートです。うまい、深い、面白い。三拍子揃った会心作。
「BOOK」データベースより引用

小田急沿線に在る古いアパートを舞台に、大家の木暮さんと不思議な店子たちの物語。
連作短編集の形式をとっており、1編ごとにそれぞれ異なる住人にスポットを当てつつもどこかで繋がりがあり、小説全体で「木暮荘」を描き上げるような形になっている。
大家も店子たちも個性的でクセのあるキャラクターばかりだが、人と人とが関わる上で必ず温もりや優しさが感じられるようなお話になっている。


 

終わりに

ここに紹介した以外にもおすすめ作品はあります。三浦しをん作品は電子書籍「ebookjapan」で購入できるものが多いです。是非電子書籍を活用して読んでみてください。

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