恩田陸の「理瀬シリーズ」本編/外伝含め読むべき順番や時系列を徹底解説!

このサイトでは過去にも恩田陸さんに関する記事を書いております。

今回は恩田陸作品の中でも人気の高い「理瀬シリーズ」を余すところなく楽しむために、「外伝」と呼ばれる短編を含めた全作品の紹介、時系列や読むべき順番などを解説していきます。

「理瀬シリーズ」を刊行順に紹介する

2021年5月末、17年ぶりにシリーズの新作『薔薇のなかの蛇』が刊行されたことで再び注目を集めていますが、まずは「理瀬シリーズ」と広く認知されている5作品を刊行順に紹介していきます。

1.『三月は深き紅の淵を』

鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に二泊三日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、十年以上探しても見つからない稀覯本『三月は深き紅の淵を』の話。たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。
「BOOK」データベースより引用

1997年に刊行された「理瀬シリーズ」の1作目は、全4編からなる短編集です。
この4編は登場人物も設定もバラバラで、シリーズ1作目と謳いながら、水野理瀬が登場するのは4編目の「回転木馬」のみです。
架空の小説「三月は深き紅の淵を」を巡る短編集となっており、ある時は読み手の立場から存在しないはずの本を探し、ある時は書き手の立場から回想シーンを描いた作品となっています。
4編目の「回転木馬」は作者がこの小説を書き出そうとしているところから始まりますが、作者の1人称に割り込む形で挟まる回想シーンは、シリーズ2作目『麦の海に沈む果実』の予告編であり、要約版であり、裏と表とも言える内容です。
これを読んだからと言って『麦の海に沈む果実』のネタバレになってしまうということはないですし、むしろ設定を理解して読みやすくなるのでご安心ください。
なおシリーズ3作目「黒と茶の幻想」は、この作中作「三月は深き紅の淵を」の第一部を実際に小説化したものです。
詳しくは後述しますが、こちらも水野理瀬が主人公ではありません。

 

2.『麦の海に沈む果実』

三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後の日に来た理瀬の心は揺らめく。閉ざされたコンサート会場や湿原から失踪した生徒たち。生徒を集め交霊会を開く校長。図書館から消えたいわくつきの本。理瀬が迷いこんだ「三月の国」の秘密とは?この世の「不思議」でいっぱいの物語。
「BOOK」データベースより引用

シリーズ2作目は、水野理瀬が主人公として初めて登場する長編小説です。
実質1作目と言ってもよく、『三月は深き紅の淵を』を飛ばして、本作から読み始めても問題ありません。
北海道の広大な湿原に存る3月の国と呼ばれる学園を舞台に、季節外れの転入生として理瀬が3年生(中3)に編入するところから物語が始まります。
作品全体に漂う暗く重苦しい雰囲気や、伏線として散りばめられる謎に、序盤は取っつきにくさを感じるかもしれませんが、第一の事件が起こってからは加速度的に面白くなっていきます。
学園モノらしく個性のある生徒たちや、物語の鍵を握る校長の存在、そして想像を掻き立てられる学園内の描写と、作品を通して質の高い学園ミステリーに仕上がっています。
また憂理ヨハンといった、他作品でも重要な役割を担う人物が複数登場します。
ラストは思いもよらない驚きの展開が待ち受けています。今後のシリーズ続編を読む上で極めて重要な設定が語られますので、「理瀬シリーズ」を読む上で外せない1冊です。

 

3.『黒と茶の幻想』

太古の森をいだく島へ―学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に深く刻み込まれていた。「美しい謎」に満ちた切ない物語。 –このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
「BOOK」データベースより引用

学生時代の友人である4人の男女が久しぶりの再会を機に、Y島(屋久島)への旅行を計画するところから物語が始まります。
本作品は全4章から構成され、章ごとに4人の誰かが一人称となり、それぞれの過去の回想と現実を行き来しながら、物語(旅)は進んでいきます。
旅のテーマは「美しい謎」。過去の恋愛や事件によって受けた心の傷が、旅の非日常によって少しずつ表面化していきます。
何か大きな事件が起こるわけでもなく、物語の起伏としては理瀬が主人公の作品と比べて物足りなさを感じるかもしれませんが、日々社会で働く4人が旅を経て自らに区切りを付ける感じがある種の爽快感を生みます。
ミステリーだけではない恩田陸氏の幅広さが感じられる作品ではないでしょうか。
なお上述した通り、本作品では水野理瀬は登場しません
代わりに『麦の海に沈む果実』で登場した梶原憂理が、4人共通の知人として重要な役割を担っています。
3月の国“での理瀬の友人である憂理の、学園卒業後の様子が見て取れます。
ちなみに文庫版では上下巻に分かれているので注意が必要です。

 

4.『黄昏の百合の骨』

「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り家は処分してはならない」亡き祖母の奇妙な遺言に従い、「魔女の館」と噂される洋館に、理瀬は、やってきた…。華麗なる恩田ミステリー。
「BOOK」データベースより引用

シリーズ4作目、水野理瀬を主人公とした作品としては『麦の海に沈む果実』以来2作品目となります。
3月の国“を去った後、祖母が住んでいた長崎の白百合荘に引っ越し、そこで血の繋がっていない叔母2人と住むことになった理瀬。
祖母が不可解な死を遂げてからしばらくして白百合荘にやってきた理瀬ですが、次第に彼女の周りで奇妙な事件が起こるようになります。
2人の叔母や、2人の従兄弟、そして隣人の同級生一家など、周辺人物を巻き込みながら、物語が進むにつれ不気味さが加速していきます。
Rとは誰か?ジュピターとは何か?序盤に散りばめられた謎や事件の真相は、終盤一気に解決することになるのですが、予想もつかないどんでん返しもあり、これぞ恩田ミステリーと言うべきラストになっています。
一方で『麦の海に沈む果実』同様、一部の謎が残存します。今後のシリーズで明らかになっていくのでしょうか。

 

5.『薔薇の中の蛇』

英国へ留学中のリセ・ミズノは、友人のアリスから「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった館のパーティに招かれる。そこには国家の経済や政治に大きな影響力を持つ貴族・レミントン一家が住んでいた。美貌の長兄・アーサーや、闊達な次兄・デイヴらアリスの家族と交流を深めるリセ。折しもその近くでは、首と胴体が切断された遺体が見つかり「祭壇殺人事件」と名付けられた謎めいた事件が起きていた。このパーティで屋敷の主、オズワルドが一族に伝わる秘宝を披露するのでは、とまことしやかに招待客が囁く中、悲劇が訪れる。屋敷の敷地内で、真っ二つに切られた人間の死体が見つかったのだ。さながら、あの凄惨な事件をなぞらえたかのごとく。

シリーズ5作目、前作から実に17年もの時を経て出版されたシリーズ最新作です。
イギリスへ留学した理瀬が、「ブラックローズハウス」と呼ばれる友人邸で行われたパーティーに参加します。
作品全体に漂う不気味さはいつも通りですが、今回は物語の大半が、理瀬の友人の兄アーサーの視点で物語が語られます。
そのため『麦の海に沈む果実』、『黄昏の百合の骨』と比べて理瀬の心理描写が圧倒的に少ないので注意が必要です。
招かれたレミントン家の館で次々に起きる事件、その犯人は誰か?という謎ももちろんですが、理瀬の家とレミントン家との関わりや、理瀬とヨハンとの関係など、シリーズを通した謎、伏線にも注目です。
17年ぶりの新作ということでシリーズ完結かと思いきや、次回作に繋がるような伏線も終盤登場し、今後の続編に期待が持てる内容となっています。

 

「理瀬シリーズ」外伝を紹介する

以上、ここまでが「理瀬シリーズ」と呼ばれる作品です。水野理瀬を主人公とした作品や、そうでないものも含めて全て読み応えのある長編小説です。

ここからは「理瀬シリーズ」外伝と呼ばれる短編たちを紹介します。本編には直接関係はありませんが、スピンオフとしてシリーズ愛読者にはおすすめの内容となっています。
なお短編は内容に言及すると即ネタバレとなってしまいかねません。時系列だけ簡単に触れていますので、本編と組み合わせて読んでみてください。

1.『図書室の海』(睡蓮)

あたしは主人公にはなれない―。関根夏はそう思っていた。だが半年前の卒業式、夏はテニス部の先輩・志田から、秘密の使命を授かった。高校で代々語り継がれる“サヨコ”伝説に関わる使命を…。少女の一瞬のときめきを描く『六番目の小夜子』の番外篇(表題作)、『夜のピクニック』の前日譚「ピクニックの準備」など全10話。恩田ワールドの魅力を凝縮したあまりにも贅沢な短篇玉手箱。
「BOOK」データベースより引用

全10作品を収録した短編集、この中の『睡蓮』が「理瀬シリーズ」の外伝にあたります。
理瀬が祖母や従兄弟の稔・亘兄弟と暮らしていた頃の物語で、時系列としてはシリーズ2作目『麦の海に沈む果実』より(=シリーズの中で最も)前となります。
稔と亘はシリーズ4作目『黄昏の百合の骨』でも主要人物として登場するので、4作目を読んだ後に『睡蓮』を読むのが良いでしょう。

 

2.『朝日のようにさわやかに』(水晶の夜、翡翠の朝)

ビールについての冒頭から、天才トランペッターや心太へ話題は移り、最後は子供の頃に抱いていた謎の解明へと至る―。虚実の狭間を、流れる意識のごとく縦横に語る表題作他、ホラー、ミステリ、SF、ショートショート等々、恩田陸のあらゆる魅力がたっぷり詰まった、物語の万華鏡。
「BOOK」データベースより引用

『図書室の海』に続いて短編集第2弾は、全14編から構成されています。その中で『水晶の夜、翡翠の朝』が「理瀬シリーズ」の外伝にあたります。
本作品はシリーズ2作目『麦の海に沈む果実』から数ヶ月後の”3月の国”を描いた作品で、理瀬の友人ヨハン視点で語られます。
ヨハンは5作目『薔薇のなかの蛇』にも登場します。シリーズを通して重要人物の1人ですね。

 

3.『謎の館へようこそ 黒』(麦の海に浮かぶ檻)

「館」の謎は終わらない―。館に魅せられた作家たちが書き下ろす、色とりどりのミステリの未来!最先端を行く作家たちが紡ぎ出す6つの謎。
「BOOK」データベースより引用

短編第3弾は、恩田陸の短編集ではなく、全6作品から成るアンソロジーです。その中で『麦の海に浮かぶ檻』が「理瀬シリーズ」の外伝にあたります。
時系列としてはシリーズ2作目『麦の海に沈む果実』の直前、”3月の国”で重要な鍵を握る校長先生をメインに据えた短編です。
全30ページ程度と非常に短いですが、校長先生の本名も分かりますのでファンにはたまらないですね。
なお本名を知ってしまうと『麦の海に沈む果実』の面白さがダウンしてしまいますので、必ずシリーズ2作目を先に読みましょう。

 

「理瀬シリーズ」時系列順に並べてみる

5つの長編・3つの短編を時系列に並べてみると、以下のようになります。

1.『睡蓮』
↓↓↓
2.『麦の海に浮かぶ檻』
↓↓↓
3.『麦の海に沈む果実』
↓↓↓
4.『水晶の夜、翡翠の朝』
↓↓↓
5.『黄昏の百合の骨』
↓↓↓
6.『薔薇のなかの蛇』
↓↓↓
7.『黒と茶の幻想』
——
※『三月は深き紅の淵を』は対象外

並べてはみたものの、時系列順に読むのはおすすめしません。なぜならシリーズ2作目『麦の海に沈む果実』が物語を進めていく上で重要な鍵となるからです。

一通り読んだ後、2週目で時系列順に読むというのはありですが、初見では以下で言及する順番で読んだ方が良いでしょう。

 

「理瀬シリーズ」読むべき順番を紹介する

それでは、おすすめの「理瀬シリーズ」読むべき順番を紹介します。

(1.『三月は深き紅の淵を』)
↓↓↓
★2.『麦の海に沈む果実』
↓↓↓
(3.『黒と茶の幻想』)
↓↓↓
★4.『黄昏の百合の骨』
↓↓↓
★5.『薔薇のなかの蛇』
↓↓↓
(6.『睡蓮』)
↓↓↓
(7.『水晶の夜、翡翠の朝』)
↓↓↓
(8.『麦の海に浮かぶ檻』)

(カッコ内)は任意、★が必須

まず必須としては理瀬が主人公の長編3つを挙げております。手っ取り早く「理瀬シリーズ」を楽しみたい!という方は最低限この3作品を読めば良いでしょう。

※最新作は理瀬を主役と言っていいものかかなり怪しいところです。場合によっては飛ばしても良いですがシリーズ最新作なので前作からの流れでそのまま読んでしまうので良いでしょう。

一方で「理瀬シリーズ」を余すところなく楽しみたい!方は(任意)の5作品も含めて、上記の順番で読んでみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました