今回は作家恩田陸のおすすめ小説を順位付けしてみます。
恩田陸といえば、ミステリーやSFから、ファンタジー、青春小説、芸術小説など幅広いジャンルの小説を執筆し、直木賞他文学賞をいくつも受賞している人気作家です。
今回は私が過去に読んだ恩田陸作品から、独断と偏見でトップ10を決めさせていただきました。
またこの記事で紹介している作品のほとんどが、電子書籍で配信されています。
どの電子書籍サービスを使えば良いか分からない!という方は、以下の比較記事をご参照ください。
恩田陸のおすすめ小説トップ10を独断と偏見で選んでみた
1.『夜のピクニック』
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
「BOOK」データベースより引用
24時間かけて80kmという長い距離を歩く、高校の伝統行事「歩行祭」に臨む高校生たちを描いた作品。
3年間同じ時を過ごした仲間たちと夜歩く、日常の延長だけどどこか非日常なイベント「歩行祭」をリアルに描き、生徒たちの様々な感情を一つ一つ丁寧に言語化する心理描写が素晴らしいです。
思わず自分の高校時代を思い返さずにはいられない、これぞ青春小説といった作品になっています。
第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞をダブル受賞した名作。2位と悩みましたが1位はこちらにしました。
2.『蜜蜂と遠雷』
私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。著者渾身、文句なしの最高傑作!
「BOOK」データベースより引用
国際的なピアノコンクールを舞台に、若干16歳の少年や天才少女、アラサーのサラリーマンなどの実力者たちの奮闘を描いた群像劇。
ピアニストだけでなく、彼らを評価する審査員たちの立場からもストーリーが展開されることで、多角的な視点からピアノコンクールが描写され、奥行きの深い物語となっています。
本作の特徴はなんといっても音楽を文字で表現しきっているところです。
クラシックの知識に疎くても、文章を通してピアノの音が聞こえてくるかのような。臨場感あふれる演奏シーンは圧巻で、取材〜完成までに10年を要したという作者の取材力の高さが伺えます。
また本作は史上初の本屋大賞と直木賞のダブル受賞作品としても有名です。
上述の『夜のピクニック』でも本屋大賞を受賞しており、同一作家による複数回の本屋大賞受賞も史上初の快挙となっています。
また、『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集となる『祝祭と予感』が幻冬社より発売されています。
3.『チョコレートコスモス』
芝居の面白さには果てがない。一生かけても味わい尽くせない。華やかなオーラを身にまとい、天才の名をほしいままにする響子。大学で芝居を始めたばかりの華奢で地味な少女、飛鳥。二人の女優が挑んだのは、伝説の映画プロデューサー・芹澤が開く異色のオーディションだった。これは戦いなのだ。知りたい、あの舞台の暗がりの向こうに何があるのかを―。少女たちの才能が、熱となってぶつかりあう!興奮と感動の演劇ロマン。
「BOOK」データベースより引用
有名若手女優東響子と無名の天才佐々木飛鳥、対照的な2人の女性の対比を、演劇のオーディションを通して描き出した物語です。
『蜜蜂と遠雷』ではピアノコンクールでしたが、今回の作品でも文字から演劇の緊張感・迫力がビシビシと伝わってきます。
アートという未知の世界がまるで身近に感じられるような描写力が恩田陸氏を支えているような気がします。
なおこの作品は当初3部構想でした。続編にあたる『ダンデライオン』が途中まで連載されていたのですが、掲載誌の休刊に伴い宙に浮いてしまった形となっています。
本作品は個別記事にもしていますので、よろしければ下記もご覧ください。
4.『麦の海に沈む果実』
三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後の日に来た理瀬の心は揺らめく。閉ざされたコンサート会場や湿原から失踪した生徒たち。生徒を集め交霊会を開く校長。図書館から消えたいわくつきの本。理瀬が迷いこんだ「三月の国」の秘密とは?この世の「不思議」でいっぱいの物語。
「BOOK」データベースより引用
本作品は、水野理瀬を主人公とした「理瀬シリーズ」の2作目にあたります。
北海道の広大な湿原に存る3月の国と呼ばれる学園を舞台に、季節外れの転入生として理瀬が3年生(中3)に編入するところから物語が始まります。
作品全体に漂う暗く重苦しい雰囲気に、序盤は取っつきにくさを感じるかもしれませんが、そこは恩田ワールドと割り切ってしまえば、その後は加速度的に面白くなっていきます。
学園モノらしく個性のある生徒たちや、物語の鍵を握る校長の存在、そして想像を掻き立てられる学園内の描写と上質な学園ミステリーに仕上がっています。
本作品は「理瀬シリーズ」を語る上で極めて重要な小説です。
1.三月は深き紅の淵を
2.麦の海に沈む果実
3.黒と茶の幻想
4.黄昏の百合の骨
5.薔薇のなかの蛇
5.『ライオンハート』
いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ…。17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、フロリダ。時を越え、空間を越え、男と女は何度も出会う。結ばれることはない関係だけど、深く愛し合って―。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか。切なくも心暖まる、異色のラブストーリー。
「BOOK」データベースより引用
時空を超え何度も巡り会うエリザベスとエドワード、決して結ばれることはない運命に翻弄される2人を描いたファンタジー恋愛小説です。
悲しき別れもありながらも用意された結末には思わずジンときます。とにかく設定がたまりません。
上位5作品はミステリーや青春群像劇をメインに紹介してきましたが、改めて恩田陸という作家の幅広さ・引き出しの多さを感じさせる作品です。
ミレーの虹に着想を得たと言いますが、各章に挟まる挿絵にも注目です。
※電子書籍には挿絵が無いようなので注意が必要です。紙の本推奨ですね。
6.『六番目の小夜子』
津村沙世子―とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
「BOOK」データベースより引用
学園に語り継がれる言い伝えを題材に、謎めいた転校生やクラスメイトたちが経験する奇怪な現象を描いた学園ホラー。
伝説のデビュー作という宣伝文句の言葉通り、少しミステリアスで、でも爽やかさも残る恩田節に引き込まれずにはいられません。
本作はドラマ化もされていますが、原作の方が好みかなと思います。
内容は結構不気味で怖いんですが、それをあまり感じさせ過ぎないストーリーテリングは見事です。
全てを語らず読者に考えさせる手法を用いたラストは、多少好き嫌いが分かれる部分かもしれません。
7.『ドミノ』
一億円の契約書を待つ、締切直前のオフィス。オーディション中、下剤を盛られた子役の少女。推理力を競い合う大学生。別れを画策する青年実業家。待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。真夏の東京駅、二七人と一匹の登場人物はそれぞれに、何かが起こる瞬間を待っていた。迫りくるタイムリミット。もつれ合う人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが次々と倒れてゆく!抱腹絶倒、スピード感溢れるパニックコメディの大傑作。
「BOOK」データベースより引用
27人の登場人物が東京駅で繰り広げるてんやわんやの物語。
パニックコメディという説明の通り、些細な事件をきっかけに繋がりの無い登場人物たちが連鎖的に関わり合っていく様を臨場感たっぷりに描いた作品です。
多くの登場人物を見事に描き分けているのはもちろん見事ですが、そもそもこの大人数に挑戦するチャレンジ精神がすごいです。
1つずつのエピソードは短めで、テンポよく物語が展開されていくので、非常に読みやすいです。
1.ドミノ
2.ドミノin上海
8.『光の帝国』
膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
「BOOK」データベースより引用
特殊な能力を持つ「常野」の人々を描いた、通称「常野シリーズ」の1作目。
本シリーズは他に2作品出ていますが、『光の帝国』のみが短編集となります。
1.光の帝国
2.蒲公英草紙
3.エンド・ゲーム
9.『ネバーランド』
舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。
「BOOK」データベースより引用
冬休みに帰省せず寮に居残った4人の男子生徒の物語。日常からふとしたきっかけでミステリアスな雰囲気に持っていくのが本当にうまいと思います。
恩田作品はどちらかというと女子生徒が主人公の作品が多いイメージでした。男子校の実態とは多少離れているのでは?と思う部分もありますが、問題なく読めます。
10.『ユージニア』
「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」こんな体験は初めてだが、俺は分かった。犯人はいま、俺の目の前にいる、この人物だ―。かつて街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て解き明かされてゆく、遺された者たちの思い。いったい誰がなぜ、無差別殺人を?見落とされた「真実」を証言する関係者たちは、果たして真実を語っているのか?日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー。
「BOOK」データベースより引用
数十年前に起きた凶悪殺人事件が、何十年もの時を経て関係者の証言らによって明らかになっていく、というストーリーです。
日本推理作家協会賞も受賞したミステリーですが、恩田作品の中ではこのジャンルは珍しいのではと思います。
ポイントとしては、数十年前の事件に関する証言であるため、人々の記憶が必ずしも正確に残存していない点、そして結末が読者に委ねられているという点。
真実は一つとは限らない、と著者自身が描きたかったというグレーゾーンの決着は、読む人がこの作品に何を期待するかによって100%分かれると思います。
終わりに
恩田陸の小説ランキング、いかがでしたでしょうか。これ以外にもおすすめはいくつもあるのですが、、手に取ったことのない小説があればぜひお読みいただければと思います!
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